2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

高田文夫『誰も書けなかった「笑芸論」』

高田文夫『誰も書けなかった「笑芸論」』 脚本作家・高田氏は「オレたちひょうきん族」や「ビートたけしのオールナイトニッポン」など多くのテレビ・ラジオ番組を手掛けた。いまも「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」というラジオ番組を続けている。この本は「…

神谷和宏『ウルトラマン「正義の哲学」』

神谷和宏『ウルトラマン「正義の哲学」』 神谷氏は中学教師として、ウルトラマン・シリーズの「読解」により善悪や、「真実の正義」とは何かを生徒とともに考える授業実践をしてきた。この本は、そのエッセンスがつまっており、ハーバード白熱教室のサンデル…

井上章一『現代の建築家』

井上章一『現代の建築家』 イタリア・ルネッサンス時代の16世紀にダ・ヴィンチやミケランジェロなどの画家の伝記や作品を描いたヴァザーリ『ヅネッサンス画人伝』(白水社)がある。私は、井上氏の『現代の建築家』を読みながら、ヴァザーリを連想した。 …

佐藤智恵『テレビの秘密』

佐藤智恵『テレビの秘密』 視聴率とは株価と似ている。変動要素が多く、どんな計算式を用いても予測できないと佐藤氏はいう。佐藤氏はこれまで、制作者、編成者、経営者、出演者、視聴者の立場からテレビを、日米両国で「複眼的」に見てきた。ヒットのセオリ…

川上量生『コンテンツの秘密』

川上量生『コンテンツの秘密』 川上氏はドワンゴを設立し、また「ニコニコ動画」の運営に携わっている。同時にジブリでプロヂュサー見習いとして過ごし、宮崎駿、高畑勲、庵野秀明氏らとコンテンツ作りの現場を経験してきた、川上氏はコンテンツの情報量の仕…

『辻征夫詩集』

『辻征夫詩集』 辻征夫の詩を読んでいると、鬱屈した激しいものが、日常の平凡な生活の中で「明るく」やさしい言葉で表現されているのに驚く。 「タバコと パチンコと 恋と 卑俗と かぎりなく 純なものと となりあい まざりあって ふきあげる高貴な現実 それ…

K・ケリー『テクニウム』

K・ケリー『テクニウム』 壮大なテクノロジー論である。ケリー氏は、テクノロジーの活動空間を「テクニウム」と定義している。私が驚いたのは、ケリー氏がテクノロジーを宇宙創造から、地球自然の生命誕生の「進化」の延長上として、人間の拡張として論じて…

荒木飛呂彦『漫画術』

荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の漫画術』 漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の漫画家・荒木氏が、漫画の王道を描くためのノウハウについて、自作をもとに「地図」として書いたものである。漫画が「総合芸術」であることがよくわかる、 最初の1ページをどう描くかを、…

幸田露伴『努力論』

幸田露伴を読む(4) 『努力論』 露伴の幸福論・人生論だが、東洋思想を基盤にしたもので、西欧の功利主義(ミルやラッセルなど)や、キリスト教的(ヒルティなど)、合理的幸福論(アランなど)とは違った視点を述べているので面白い。 露伴は明治末期の苦…

佐々木敦『「4分33秒」論』

佐々木敦『「4分33秒」論』 20世紀現代音楽の作曲家ジョン・ケージの作品「4分33秒」を論じた音楽論で面白い。この作品はピアニストがピアノの前に座り、何も演奏しないで4分33秒たち退場する曲である。1952年に初演されたとき物議をかもした…

中垣俊之『粘菌』

中垣俊之『粘菌』 イグ・ノーベル賞という面白い賞がある。この賞は、自然科学で人々を笑わせ、次に考えさせる研究成果に与えられる。中垣氏はこの賞を2回も受賞している。単細胞生物の粘菌が、迷路などのパズルを解けるし、関東圏の鉄道網のようなネットワ…

D・ロックフェラー『回顧録』

D・ロックフェラー『ロックフェラー回顧録』 石油王ロックフェラーの三代目デイヴィッド氏が、2002年に88歳の時に刊行した回顧録である。20世紀のアメリカの現代史の一側面として読んでも面白い。同時にアメリカの「華麗なる一族」であるロックフェ…

幸田露伴『運命』

幸田露伴を読む(3) 『運命』 最近モンゴル史家・杉山正明氏の『露伴の「運命」とその彼方』(平凡社、2015年刊)を読んだ。杉山氏は、露伴「運命」を激賞し、15世紀初頭の明・永楽帝とイスラム圏に帝国を築いたティムール帝の激突までを視野に入れ…

幸田露伴『五重塔』

幸田露伴を読む(2) 『五重塔』 露伴の傑作である。デーモンに憑かれた職人=芸術家が、困難にめげず五重塔を建設し、台風の暴風にもビクともしなかったという「芸」による創造物語とも読める。『風流仏』や『一口剣』の露伴作品の延長上に見る。だが、は…

幸田露伴『幻談・観画談』

幸田露伴を読む(1) 『幻談・観画談』 幸田露伴は、幻想文学(怪談)をいくつも書いている。だが、ポーやホフマンのような超現実性や怪異性は薄い。泉鏡花のような官能的な神秘性もない。露伴の怪談には、中国的オカルト性や神仙性があり、日常生活と境界…

ルネ・サバタ『ロシア・ソヴィエト哲学史』

ルネ・ザパタ『ロシア・ソヴィエト哲学史』 サバタ氏の指摘のように、この200年のロシアの哲学史には悲劇的側面がある。絶対専制権力の支配のなか、西欧思想との葛藤のなか、ロシアの独自性・民族性の思想形成と実践的統一性は、ロシア哲学の言語に切迫性…

磯崎新『日本建築思想史』

磯崎新『日本建築思想史』 磯崎氏は、近代世界システムの到来でモダンが日本で始まったが、20世紀になると「古層」「江戸システム」に「近代世界システム」「新世界システム」が重層した日本様式「わ」空間が成立してきたという。 それを建築家として堀口…