2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

辻惟雄『奇想の系譜』『奇想の図譜』

辻惟雄『奇想の系譜』 辻惟雄『奇想の図譜』日本美術史のなかの「奇想」と「かざり」の系譜を探究した面白い本である。辻氏は奇想をエキセントリックの多少にかかわらず、因習の殻をやぶる自由で斬新的発想という。『奇想の系譜』では、岩佐又兵衛、狩野山雪…

三遊亭円朝『牡丹灯篭』『真景累ケ淵』

三遊亭円朝『牡丹燈籠』 三遊亭円朝『真景累ケ淵』 明治初期の円朝の人情噺は聴いてみたい。いま読めるのはその速記文である。円朝の江戸俗語から二葉亭四迷は、近代的言文一致体を作ったという。だが円朝の肉体を通り呼吸 の息遣いで、歌舞伎俳優のせりふの…

武満徹エッセイ選』 福岡伸一『もう牛をたべても安心か』

『武満徹 エッセイ選』(小沼純一編)日本の代表的作曲家は、またエッセイストとしても優れ、良い文章を書いている。狂死した自分の伯母を描いた「骨月」は名文で見事な短編小説を読むようだ。もちろん音楽論や言葉論さらに映画音楽論は、日本文化論の視点か…

松井隆典『宇宙誌』嶺重慎ら『天文学入門』

嶺重慎・有本淳一編著『天文学入門』 松井孝典『宇宙誌』 科学の進歩により「科学的無常観」ともいうべきものがでてきている。『天文学入門』でも鴨長明『方丈記』の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」が天体の栄枯盛衰でいわれ、分子…

ガンディー『獄中からの手紙』『真の独立の道など』

ガンディー『獄中からの手紙』 エルベール編『ガンディー聖書』 ガンディー『真の独立への道』 ガンディーは20世紀の偉大な宗教家だろう。もちろんインド独立のための政治運動家ともいえる。『真の独立への道』は政治運動の実践書である。だがその根底には…

ソロモン『ベートーヴェン』

メイナード・ソロモン『ベートーヴェン』ベートーヴェンの伝記ではロマン・ロランのものを読んだことがある。理想主義的で苦悩から歓喜の解放の音楽という視点だった。アメリカの音楽学者ソロモンのこの本は1977年に出たが、これまでの研究を綿密に検討…

飯尾潤『日本の統治構造』

飯尾潤『日本の統治構造』 この本は2007年に出版されたから民主党による政権交代の前に書かれた。だが政権交代を視野に入れているし、現代日本の統治構造の変化と今後も押さえている。日本の政治は90年代から変革のため混迷している。細川内閣の選挙制…