2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ベンヤミン『図説写真小史』藤田省三『写真と社会小史』

ベンヤミン『図説 写真小史』 1931年に書かれた写真が誕生した初期からの歴史と写真論である。『複製技術時代の芸術』とともに映像技術革新にともなって芸術と技術、複製時代と大衆化の20世紀芸術を論じた古典だ。いま読むと常識となっている面もある…

カフカ『アメリカ』

フランツ・カフカ『アメリカ』 この小説を読んでいて、私は就職氷河期で悪戦苦闘している若者のことが思われてならなかった、ニートや派遣社員、非正規労働者の若者たちの姿がなぜか頭に浮かぶ。カフカの青春小説である。社会に出て孤独と迫害に、純粋な無垢…

川合康三『白楽天』

川合康三『白楽天―官と陰のはざまで』 白楽天といえば平安朝時代には人気で『源氏物語』や『枕草子』にも引用され、菅原道真にも大きな影響を与えた。近世以後は唐詩では李白や杜甫が芭蕉はじめ歌俳人に持て囃された。玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋をロマンスとし…

ウェルズを読む スタンダール『パルムの僧院』 『チエホフ戯曲を読む』アタリ『20世紀の歴史』岩井克人『会社はこれからどうなるか』 ダワー『昭和』加藤陽子『それでも日本人は戦争を選んだ』西垣通『デジタル・ナルシス』藤綱慎一郎『縄文論争』タロッイ『評伝ヴェルディ』ル・フェーブル『革命的群衆』ブルトンヌ『パリの夜』井上靖を読む

ウェルズを読む 『宇宙戦争』① 日常生活に突然宇宙からの侵略者が現れる。 ② その侵略者は知性・科学技術において人間よりも優れている。 ③ 残酷であり対話は通じない。 ④ 皆殺しを意図している。 ⑤ 占領して永久支配を目指す。 ⑥ 一人の平凡な男が廃墟の中…

メルヴィル『白鯨』吉川節子『印象派の誕生』

)メルヴィル『白鯨』 いま環境保護の視点から捕鯨禁止が論議されている。だが19世紀はアメリカをはじめ西欧では捕鯨が盛んだった。エネルギー源として鯨油が重要視された。現代の石油争奪の相似を思ってしまう。日本開国は捕鯨基地の確保というアメリカの…

村上陽一郎『科学者とは何か』シュンペーター『租税国家の危機』

村上陽一郎『科学者とは何か』『人間にとって科学とは何か』 2010年度民主党政権下、予算の事業仕分けが行われ次世代スパコンなど科学予算が大幅に削減され、優遇からの転落は科学界に衝撃を与えた。現代社会における科学とは何かを考えさせる本が村上氏…

大山誠一『天孫降臨の夢』

大山誠一『天孫降臨の夢―藤原不比等のプロジェクト』大山氏の本で『聖徳太子の誕生』を読んだときの驚きは大きかった。聖徳太子が実在せず古代日本で作られた虚構だと綿密に史料で実証されていたからだ。この本はさらに発展させ、誰がいかなる状況で聖徳太子…

シーボルト『日本植物誌』

大場秀章監修『シーボルト 日本植物誌』 大場秀章『花の男 シーボルト』 江戸時代に長崎・出島のオランダ商館の医師として滞在したドイツ人シーボルトは、「シーボルト事件」で有名であり教科書にも載っている。日本女性と一緒になり、その子稲は日本初の女…