2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

アラン『幸福論』

幸福論を読む(その①) アラン『幸福論』 「幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ」とアランはいう。「微笑」という章では、気分にたいして戦うのは判断力でなく、姿勢を変えて適当な運動をし、微笑をし、首をすくめ筋肉を統御することが、心配事の…

建礼門院右京大夫集』

『建礼門院右京大夫集』 平清盛の孫資盛の恋人であった右京大夫が、愛する人の死のあと、嘆きとその追憶を散文と和歌で綴った家集である。平家滅亡と愛する人の死の悲しみを、死に切れず「失われた時を求めて」追憶を書き、詠う右京大夫の一生続く喪の悲しみ…

山口二郎『政権交代とは何だったのか』

山口二郎『政権交代とは何だったのか』 中道左派政党による政権交代を訴えてきた政治学者山口氏が、民主党の2009年の政権交代で、政治主導による「生活第一」への政策転換を、なぜ進めることが出来なかったのかを検証した本である。民主党政権の意義と限…

遠藤薫編著『大震災以後の社会学』

遠藤薫=編著『大震災後の社会学』 社会システム論による社会学者たちが、大震災後の日本におけるリスク社会でダメージを最小限にし、リスクを取り込んで自己強化する「自己快癒力」をいかに目指すかを分析した本である。そこには5人の社会学者が大震災と社…

飯泉太子宗『時をこえる仏像』

飯泉太子宗『時をこえる仏像』 このところ阿修羅像の展示など仏像ブームが起こっている。だが仏像は1000年から数百年に渡って保存されてきたもので、木造だから当然壊れてくる。それを修理・修復(この二つは厳密には違う)し、伝承していくのが、宗教の…

ジンメル『社会学の根本問題』

ジンメル『社会学の根本問題』 20世紀始めに出た社会学の古典である。いま日本で、社会学主義は盛んである。デュルケームやマックス・ウェーバーの社会学とともにジンメルは決して古くは無い。今度読んでみて、その現代性と面白さを同時に感じた。ジンメル…

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』 21世紀に入って生命科学は人間の遺伝子配列のゲノムを全部読み取り、さらにほかの生物もゲノムの膨大な量の情報が読み取られ、蓄積されてきている。生命は物理・化学によって理解できるという生命論に対…

野本陽代『ベテルギウスの超新星爆発』

野本陽代『ベテルギウスの超新星爆発』 宇宙像は天文学の発展によって次々塗り替えられていく。野本氏は星が最後を迎え爆発する直前の明るく輝く赤色超新星の出現が、宇宙像の変化に大きな役割を為して来たことをこの本で明らかにしている。天動説から地動説…

ロルカ『血の婚礼』

ガルシーア・ロルカ『三大悲劇集 血の婚礼 他二編』 悲劇的精神とは、人間が理性や正義を超えた自然的必然性(人間の情念的自然性)によって破壊されていくことにある。それはその自然的大地から沸いてくるエネルギーにより翻弄されていく人間のドラマである…

ロペ・デ・ベガ『オルメードの騎士』

ロペ・デ・ベガ『オルメードの騎士』スペイン16,17世紀の黄金世紀のコメディアは、私には浄瑠璃歌舞伎のように感じられる。ベガは2千編も戯曲を書いたというが、無敵艦隊の乗員でもあり、中傷ビラで追放されたが、後にマドリードに戻る。ドンファンで…

カルデロン『人の世は夢』

カルデロン『人の世は夢 サラメアの村長』 スペイン16、17世紀は黄金世紀といわれ、アメリカの征服や高度成長の時代だった。芸術も美術ではエル・グレコ、ベラスケスらが輩出し、文学ではセルバンテス「ドン・キホーテ」という名作が出版された。劇作家…