2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

クラーク『レンブラントとイタリア・ルネサンス』

ケネス・クラーク『レンブラントとイタリア・ルネサンス』 17世紀オランダの画家レンブラントは、古典主義的なギリシャ・ローマ芸術やイタリア・ルネサンスを学ばず、反古典主義の北方の絵描きと見なされていた。だが、1656年の破産の「財産目録」で、…

トッド・チャン・中野剛志ら『グローバリズムが世界を滅ぼす』

トッド・チャン・中野剛志ら『グローバリズムが世界を滅ぼす』 フランスのトッド、韓国のチャン、日本から柴山桂太、中野剛志、藤井聡、堀茂樹の各氏が語り合った本である。5氏ともグローバリズムに危惧を抱き、自由貿易批判者であり、新自由主義経済学に対…

小高賢『老いの歌』『土屋文明歌集』

小高賢『老いの歌』 土屋文明自選『土屋文明歌集』 「老いの文学」として短歌を捉えた小高賢は、2014年2月に亡くなった。高齢化社会で、老いを自らの内側から眺め、考え、悩み、短歌で表現する。老いを新しく生きるフロンティアとして老いの歌の隆盛に…

ジョル『第一次世界大戦の起源』

ジェームス・ジョル『第一次世界大戦の起源』 英国・オックスフォード大学のヨーロッパ現代史家が書いた古典的名著である。ジョルは1994年に亡くなった。ジョルは、国家の功罪、思想の影響、支配層の個人の重視などで現代史を描こうとした。この本でも、…

ロンドン『どん底の人びと』

ジャック・ロンドンを読む③ ジャック・ロンドン『どん底の人びと』 「朝日新聞」2014年7月24日で、最低賃金時給664円の地方が多くあり、月収8・5万円で50歳過ぎの男性が、夢も希望もなく生活保護の方がましと語ったとある。7月24日付けでは…

木村靖二『第一次世界大戦』

木村靖二『第一次世界大戦』 今年、第一次世界大戦から100年になる。ヨーロッパでは様々な記念行事が行われた。1914年開戦からソ連・東欧社会主義圏解体までを「短い20世紀」とみる歴史家もいる。木村氏の本はコンパクトに起源から、大戦の経過、終…

ロンドン『白い牙』

ジャック・ロンドンを読む② ロンドン『白い牙』 北国の荒野に生まれた犬の血4分の一混じったオオカミの一生の物語である。父母オオカミの荒野での野生の生活が描かれ、子ども「白い牙」の誕生から物語は始まる。灰色の子は、生まれたオオカミ穴から這い出し…

ロンドン『荒野の呼び声』

ジャック・ロンドンを読む① ジャック・ロンドン『荒野の呼び声』 最近書店にいったら、オオカミの本が多く並んでいた。オオカミと暮らした哲学者や、オオカミが救うなどの文明批判と、野生の自然への憬れ、闘争精神などがオオカミ生態への注目になるのだろう…

中沢弘基『生命誕生』

中沢弘基『生命誕生』 中沢氏は46億年前の地球誕生から、地球史の必然性により、なぜ生命が生まれたのかを解明しようとする。ダイナミックに流動する地球像による、地下のプレート移動の大陸移動説から書き始めている。 地球が冷却化する過程で熱を放出し…

小島毅『増補 靖国史観』

小島毅『増補 靖国史観』 小島氏は中国思想史家であり、私はかって『朱子学と陽明学』を読んでいた。だが近年は足利義満や織田信長などを、独特な史観で日本史を書いてきた。この本もその延長線上にある。近代天皇思想を、言葉の来歴により「国体」「英霊」…

中山康樹『ロックの歴史』

中山康樹『ロックの歴史』 2012年ロンドン五輪開会式で、ポール・マッカートニーが「ヘイ・ジュード」を歌い、ミック・ジャガーが「サー」の称号を贈られるなど、ブリテッシュ・ロックは音楽界で確立している。若者の音楽といわれたロックだが、それを荷…

エリアス『モーツァルト』

エリアス『モーツァルト』 モーツァルトの弦楽五重奏曲第3番と第4番を聴きながら読む。激しい悲劇的気分に、突如道化じみた軽やかな、やや浅薄なメロディーが現れ、それが繰り返される。エリアスの言うとおりだ。私は「哀しみ」の中に「喜び」の楽しさがあ…

後藤謙次『平成政治史2』

後藤謙次『平成政治史2』 この巻は「小泉劇場の時代」を扱う。1998年―2000年の小淵恵三内閣から、森喜朗内閣の2001年―2006年、その次の小泉純一郎内閣までだが、三分の二は小泉内閣で占められている。後藤氏は小泉内閣の5年5カ月は、日本…

小澤征爾×村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』

小澤征爾×村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』 世界的な指揮者と小説家が.レコードを聴きながら音楽について語り合う。小澤氏は、自分の指揮人生を振り返りながら、バーンスタインやカラヤンのもとでアシスタント指揮者などした思い出を話し…

朝倉友海『「東アジアに哲学はない」のか』

朝倉友海『「東アジアに哲学はない」のか』 確か中江兆民だったか、「日本に哲学なし」といった。また、フランスの哲学者・デリダが2004年中国に行った時「中国に哲学がない」といった。デリダがいうのは、古代ギリシャに起源をもつ形而上学と、その発展…

ユルスナール及びルシュール『三島由紀夫』

ユルスナール『三島由紀夫あるいは空虚のヴィジョン』 ルシュール『三島由紀夫』 フランスの女性作家と女性ジャーナリストの三島論であり、伝記である。外国人の目で客観的に三島を捉えようとしている。ルシュールは日本人がもつ偏見から離れ、ジャーナリス…

宇佐美文理『中国絵画入門』

宇佐美文理『中国絵画入門』 宇佐美氏は、長い歴史を持つ中国絵画史を、造形作品130点をもとに、「形」が「気」とどのように関わってきたかを基に描き出している。「気の表現」を基軸にし「形」との相関関係で、中国絵画史を古代から清朝時代まで追求して…

ハルトゥーニアン『アメリカ<帝国>の現在』

ハルトゥーニアン『アメリカ<帝国>の現在』 アメリカ社会科学の学問批判の書であるとともに、9・11テロ以後におけるアメリカの「帝国」への変貌を論じた本である。ハルトゥーニアン氏は、日本近代史が専門だから、かつて敵国として戦った日米が同盟国に…

黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』

黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』 ウクライナでは停戦が中止されて、内戦が再開された。戦闘の泥沼化の恐れがある。(「朝日新聞」2014年7月2日付)黒川氏は、1991年ソ連解体での独立を「350年間待った独立」と述べている。1648年ウクラ…