2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

大城道則『古代エジプト文明』

大城道則『古代エジプト文明』 この本の特徴は、古代エジプトで最初の統一王朝が出現してからクレオパトラの死までの3000年の歴史を、西洋世界の源流として、ミノア、ヒクソス、ヒッタイト、ペルシャ、アレクサンドロス大王のギリシャ、ローマ帝国という…

青山和夫『マヤ文明』

青山和夫『マヤ文明』 25年にわたりグアテマラ、ホンジュラス、メキシコでマヤ文明の考古学発掘・研究を行ってきた青山氏の労作である。2000年以上続くマヤ文明に日本高校教科書ではほとんど取り上げられないし、インカ、アステカ文明と一緒くたにされ…

黙阿弥『三人吉三』

黙阿弥歌舞伎を読む(その②) 『三人吉三廓初買』 この戯曲は死傷者7千人を出した安政大地震の震災後の戯曲である。震災後の江戸の宿命論、秩序の崩壊、安政大獄の政治不安、死と破壊、悪の跋扈を背景にしている。地獄のなかで、はかなく「情」を主軸に生き…

ショーペンハウアー『幸福について』

幸福論を読む(その④) ショーペンハウアー『幸福についてー人生論』 ショーペンハウアーには人間世界には困窮と苦痛に満ち、それをのがれても退屈が待ち受けており、邪悪や愚昧が支配権を持っているという認識がある。幸福や享楽を追求することをやめ、苦痛…

サター『経済成長神話の終わり』

アンドリュー・J・サター『経済成長神話の終わり』 日本では東日本大震災後でも依然として「新成長戦略」など経済成長を重んじているのに対して、サター氏は「減成長による繁栄」を対置して、それを日本の希望としている。日本はそれが出来るというのがサタ…

松浦玲『坂本龍馬』

松浦玲『坂本龍馬』 松浦氏は,坂本龍馬書簡や勝海舟日記、海援隊日史など多数の史料を使い、龍馬の一生を綿密に検証していく。龍馬伝であると共に幕末・維新史が見えてくる。私が松浦氏の本を読んでどう龍馬を捉えたかを記してみよう。 ①藤田省三は『維新の…

長沢栄治『エジプト革命』

長沢栄治『エジプト革命』 「朝日新聞」によると、4月8日エジプト大統領選の立候補が締め切られ23人が立候補し、イスラム同胞団と軍部・旧政権出身者の争いに世俗リベラル派やイスラム厳格派も出て、2011年1月25日「アラブの春」といわれたエジプト革…

マルシャーク『森は生きている』

マルシャーク『森は生きている』 ロシア児童劇の古典である。森の自然と12の月が主人公である。四季が自然の循環と蘇りを演じ、ロシアの厳寒な冬の森が舞台である。これに気まぐれで我儘な女王を頂く、支配―命令の反自然の宮廷・人工社会が対置されている…

飯島祐一『認知症の正体』

飯島祐一・佐古泰司『認知症の正体』 いまや世界は老い始めている。世界保健機構(WHO)ひよれば、認知症の患者は2050年にはいまの3倍の1億1540万人に達し、認知症がらみのコストは48兆円にのぼると発表した。新興途上国でも高齢化が進み急激…

フロイト『ドストエスキーと父親殺し』

フロイト『ドストエスキーと父親殺し/不気味なもの』 後期フロイトは、精神分析理論で宗教、文化、芸術などの解明に向かっていく。そこにはエロスとタナトス(死の欲動)、幼年期の父親、母親との関係、抑圧と解放、自我と超自我の葛藤が主なテーマになる。…

喜志哲雄『喜劇の手法』

喜志哲雄『喜劇の手法 笑いのしくみを探る』 喜劇を観客との関係性から考えようとしている。喜劇的効果のためには、観客が登場人物との間に距離を保ち、状況の完全な認識という現実にはあり得ない優越的位置で見ることが必要である。笑いは劇中人物が知らな…

八代尚宏『新自由主義の復権』

八代尚宏『新自由主義の復権』 新自由主義は、日本では小泉構造改革と結びついたイメージで語られ、市場原理主義が格差を拡大したと評価が悪い。八代氏は市場機能を最大限に生かし、市場を守る政府による社会的セーフ・ネットのもとで、効率的な市場復権を目…

大塚英志・宮台真司『愚民社会」

大塚英志・宮台真司『愚民社会』 ゼロ年代をリードしてきた評論家と社会学者の対談であり、2003、4年と大震災後における2011年の三回の対談が収録されている。お互いの考え方に違いがありながら、議論が次第に共通性に収斂していくのが面白い。大震災…

白川静・梅原猛『呪の思想』

白川静・梅原猛『呪の思想』 古代学で白川氏は中国、梅原氏は日本と新しい古代の歴史的学問(白川学と梅原学)を作り上げてきた。この二人の対談は日中の文化の共通性と差異性を浮かび上がらせて面白い。中国文明の核心は漢字と儒教である。白川氏は漢字の成…