2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

常田佐久『太陽に何が起きているか』

常田佐久『太陽に何がおきているか』 常田氏は、国立天文台教授で、2006年打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」の研究センター長である。この本は太陽観測衛星を1981年「ひのとり」打ち上げから、アメリカと協力し1991年「ようこう」、そして「…

『ギリシア悲劇Ⅱ ソポクレス』

『ギリシア悲劇Ⅱ ソポクレス』 ソポクレスといえば『オイディプス王』だろう。だが私はその娘アンティゴネが最大のヒロインだと思う。比較文学の大家ジョージ・スタイナーは『アンティゴネの変貌』(みすず書房)で、ヨーロッパ文化に甚大な影響を与えたと大…

アンディ・リーズ『遺伝子組み換え食品の真実』

アンディ・リーズ『遺伝子組み換え食品の真実』 この本に書かれていることが事実なら、原発事故と同じような恐ろしさを感じる。1996年米国で遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まり、その先端技術の効果が言われ、巨大企業が政府と結託して、安全性が確証…

『ギリシア悲劇Ⅰアイスキュロス』続

『ギリシア悲劇Ⅰアイスキュロス』続 「ペルシア人」 アテナイ人アイスキュロスは、対ペルシャ戦争のサラミス海戦でペルシャ海軍と闘った愛国者である。それが敗者ペルシャ側から、その敗戦が伝えられる王宮の場面から始まり、登場人物は総てペルシャ人になっ…

西垣通『集合知とは何か』

西垣通『集合知とは何か』 40年あまりコンピュータ研究にも携わった情報学者・西垣氏が、21世紀情報社会には専門知のみならず、一般の人々の「主観知」がお互いに相対的位置を保ち交流し、ネットを介した「集合知」でゆるやかな社会秩序を形成することが…

『ギリシア悲劇Ⅰ アイスキュロス』

『ギリシア悲劇Ⅰ アイスキュロス』 「オレステス三部作」 アトレウス一家の家族同士の三代にわたる「罪と罰」の物語であり、兄弟闘争から夫殺し、母殺しと続く「血の法則」と、その復讐がいかにして償われ、秩序ある平和がもたらされるかをドラマとして描く。…

ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』

ピーター・バラカン『ラジオのこちら側で』 若者離れや広告費下落でラジオが苦境に立たされている。一斉デジタル化は1200億円という巨費がかかるため実現できず、AM局のFM化で当面はしのぐ方向だという。ラジオ人間であり、音楽のDJとして30年を…

フランクル『死と愛』

フランクル『死と愛』 実存精神分析学者・フランクルのこの本は、アウシュビィツ強制収容所で死んだティリー夫人に捧げられている。フランクルは生きて生還し、この本を書いた。いかに苦難を乗り越え生き残っていったかが、実存的精神分析の思想で書かれてい…

岩崎秀雄「<生命>とは何だろうか』

岩崎秀雄『<生命>とは何だろうか』 生命科学の難しさは、生命体である人間がそれを対象化し、分析し実験し解読された遺伝子を操作したり、細胞を人工創出したりすることと、今生きている日常の生命活動との違和感にある。岩崎氏は細胞分子生物学者であると…

テッサ・モーリス=スズキ『批判的想像力のために』

テッサ・モーリス=スズキ『批判的想像力のために』 20世紀末から21世紀になって、グローバル時代が進むとともに、逆にナショナリズムが強大に成ってきている。東北アジアでも歴史問題の発展上に、尖閣、竹島の領土問題が起こり、日中・日韓でナショナリ…

高村光太郎『智恵子抄』

高村光太郎『智恵子抄』 近代日本でこれだけ有名な詩集はないだろう。近代挽歌の傑作だと思う。高村は彫刻家だから、愛妻智恵子をヴィーナス像を彫り刻むように、智恵子像を素材から彫り込んでいった。「裸形」では、「智恵子の裸形をわたしは恋ふ」「その造…

杉田敦『政治的思考』

杉田敦『政治的思考』 杉田氏は、民主政治における政治的思考を、政治家に要求するだけでなく、有権者自身がどう考えを深めるかという視点で書いていて、これまでの政治学の常識を破ろうと試みている。政治は様々な価値観にかかわるもので、多様な価値観の調…

村山斉『宇宙になぜ我々が存在するのか』

村山斉『宇宙になぜ我々が存在するのか』 宇宙の起源を素粒子学から探求した本である。我々の身体は元素で出来ている。その元素も何十億年も昔に爆発した超新星の屑からできた。宇宙がビックバンで始まった一秒間は星の基になる水素もなく、100億度以上の…

パルバース『賢治からあなたへ』

ロジャー・パルバース『賢治からあなたへ』 宮沢賢治の英訳者で第18回賢治賞を貰ったアメリカ人劇作家パルバースの賢治論である。20世紀日本が戦争に走っていった時代に、賢治は日本の位置やアイデンティティーに関わろうとせず、再評価されたのは、自然…

布施英利『構図がわかれば絵画がわかる』

布施英利『構図がわかれば絵画がわかる』 布施氏は美術解剖学という視点で、人体が「立つ」という骨格が重力に対してもつ「バランス」を独立して引き出すと、絵画の「構図」が生まれるという。絵画はモノだが、そこに構図があり、それが宇宙までつながってい…