2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

畑村洋太郎『技術大国幻想の終わり』

畑村洋太郎『技術大国幻想の終わり』 機械工学の畑村氏が、アジアや南米の生産現場に行き。現物に直接触れ現地人と対話し、日本の技術大国幻想の終わりと、今後の日本技術・企業の在り方を提言した本である。畑村氏は、東電福島原発の事故調査・検証委員会委…

アイザック・アシモフ『われらロボット』

アイザック・アシモフ『われらはロボット』 総務省は2015年7月28日に公表した「情報通信白書」で、空想世界のロボット「鉄腕アトム」や「ドラえもん」が現実化しつつあると、ホンダの二足歩行「アシモ」や、ソフトバンク「ペッパー」を、初期段階とし…

カール・シュミット『現代議会主義の精神状況』

カール・シュミット『現代議会主義の精神的状況』 代表制議会主義は、民主主義の制度でなく、自由主義の思想に則ったもので、そこから危機が生じると主張した1923年刊の古典である。シュミットは、ドイツ政治学者としてナチスに加担し、その反ユダヤ主義…

バウマン『リキッド・モダニティを読み解く』

ジグムント・バウマン『リキッド・モダニティを読み解く』 現代社会学者・バウマン氏は、後期近代を「流動化」(リキッド)という社会状況と位置づけて分析している。自由市場経済が、消費者ゲームとじて個人を流動化し、それに疎外された人々を産み出す。人…

原民喜『原民喜全詩集』

原民喜を読む(1) 『原民喜全詩集』 広島原爆被爆の小説『夏の花』を書いた原は、また詩人だった。この全詩集には、散文詩から四行詩、カタカナ詩のすべてが収められている。この岩波文庫では、「拾遺詩篇」の「かげろう断章」という遺稿も入っている。 「…

ジェイムズ・バラット『人工知能』

ジェイムズ・バラット『人工知能』 恐ろしい本だ。人工知能は「21世紀の核兵器」であり、今世紀にも人類絶滅にいたる最悪にして最後の発明だというのだから.いまや人工知能搭載のロボット時代が始まっている。だがバラット氏は人類に「フレンドリーな」鉄…

高橋哲哉『沖縄の米軍基地』

高橋哲哉『沖縄の米軍基地』 高橋氏は、在沖縄の米軍基地の「県外移転」は可能かを論じている。戦後70年の米軍基地沖縄集中は、変わっていない。いま沖縄では、米軍基地の「県外移転」の要求が広がっている。「日本人よ!今こそ沖縄基地を引き取れ」。本土…

幸田露伴「連環記」

幸田露伴を読む(5) 幸田露伴『連環記』 昭和16年の露伴最後の小説である。平安朝の往生伝に則ったエリート学者貴族たちがいかに現実を離脱して出家していくかが、連環のように連なって描かれていく。露伴の博識を土台にして、荘重体と語りもの文体の連…

ダンテ『新生』

ダンテ『新生』 13世紀イタリアの詩人ダンテが、若いとき書いた「詩物語」である。西欧文学の古典で、恋愛感情を聖なる女性崇拝にまで高めたといわれ、恋人ベアトリーチェは、「永遠の恋人」の名称になった。 私は、この詩物語を読み、恋人を尊敬し、高潔…

酒井直樹『パックス・アメリカーナの終焉とひきこもり国民主義』

酒井直樹『パックス・アメリカーナの終焉とひきこもり国民主義』(『思想』2015年7月号) 衆院特別委員会で、安保関連法案が、7月15日強行採決された。安倍首相がアメリカ議会で約束したスケジュールで進んでいる。「戦後の超克」がいわれるが、はた…

井村裕夫編『医と人間』

井村裕夫編『医と人間』 私は、最近肝臓がんの手術を受けた。ぜひ読みたいと思い、購入した。医学界の11人が、「医学の最前線」と「医療の現場から」の二部にわけ、いま日本の医学がかかえている問題を述べている、 ノーベル賞を受賞した山中伸弥氏が「再…

クッツェー『マイケル・K』

クッツェー『マイケル・K』 南アフリカが、アパルトヘイト末期の内戦時代の1983年に、書かれた傑作小説である。ここには暴力的文明と、有色人でみつ口のマイケル・Kの「原自由」なサヴァイバルな生き方が、アフリカの大地を背景に描かれている。 私は…

谷川俊太郎『詩に就いて』

谷川俊太郎『詩に就いて』 谷川氏の最新の詩集だが、谷川氏の「詩学」になっている。日本語の詩という言葉には、言葉による「詩作品」と、言葉になっていない「詩情」とが混同されていると谷川氏はいう。 「詩は常に無言で存在している/それに言葉を与えるの…

田中伸尚『いま、「靖国」を問う意味』

田中伸尚『いま、「靖国」を問う意味』 安保法制が成立し、自衛隊が戦争行為に入ることになれば、国のための戦死者をどう追悼するかが、新たに問題になるだろう。新たな「靖国問題」が浮上する。 国家が「国のための尊い犠牲」(英霊)として、一括して追悼…

クッツェー『恥辱』

クッツェー『恥辱』 南アフリカ生まれのノーベル賞作家クッツェーの傑作である。ポスト・アパルトヘイトの時代の南アフリカで、人種差別以後の残されたアフリカ人の憎しみと権利主張のなかで、斜陽の白人(西欧人)が、かつての支配―隷属を失い「恥辱」の状…

スチュアート・ジム『ポストモダンの50人』

スチュアート・ジム『ポストモダンの50人』 1980年代に、日本でもポストモダン思想は盛んに紹介された。だがまたもや「様々な意匠」になってしまい、いまあまり語られない。西欧近代に異議申し立てした思潮として、私は重要だと思う。日本の反構築的思…

クリスティ『そして誰もいなくなった』西村京太郎『殺しの双曲線』

アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』 西村京太郎『殺しの双曲線』 ミステリーの古典。クリスティ作品は1939年、西村作品は1979年作品である。勿論携帯もスマホもない時代の、孤島と雪の山荘の「密室」ものである。私は、西村作品はクリス…

東浩紀『弱いつながり』

東浩紀『弱いつながり』 東氏といえば「福島第一原発観光地化計画」の推進者である。この書も「哲学とは一種の観光である」という思想で彩られている。寺山修司の演劇に『書を捨てよ町に出よう』というのがあった。東氏によると、ネットは階級や所属を固定す…