2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

フランク・ライアン『破壊する創造者』

フランク・ライアン『破壊する創造者』 驚くべき本だ。ウイルスといえば、エイズやエボラ出血熱、インフェルエンザなど引き起こす「破壊的生物」と見られているが、ライアン氏は、ウイルスが自らの遺伝子を宿主DNAに逆転写し、生物進化に重要な役割をして…

金時鐘『朝鮮と日本に生きる』『猪飼野詩集』

金時鐘『朝鮮と日本に生きる』 金時鐘『猪飼野詩集』 「それでも焼かれた流浪を知るまい 骨が怨んだ焼き場のような 猪飼野どまりの生涯を知るまい」(「イルボン サリ」猪飼野詩集) 釜山生まれで85歳になる在日朝鮮人で詩人の金時鐘氏が、済州島から大阪…

J・ル=ゴフ『中世の身体』

J・ル=ゴフ『中世の身体』 アナール派の歴史学者・ル=ゴフの西欧中世の身体史である。長期持続という「ゆるやかな歴史」を重視する歴史学だけあって、身体的慣習、死と医、食、入浴、身体有機体のメタファーの政治、などが扱われている。西欧中世が、キリ…

ソートイ『素数の音楽』竹内薫『素数はなぜ人を惹きつけるのか』

ソートイ『素数の音楽』 竹内薫『素数はなぜ人を惹きつけるのか』 この二冊の数学の本を読み、数式のほとんどは理解できなかった。だが、数式を見ていると、「美的な調和」が感じられてくる。ソートイ氏は、素数をバイオリンの繊細で豊かな音色の比喩で語っ…

キティ・ハウザー『僕はベーコン』

キティ・ハウザー『僕はベーコン』 20世紀アイルランド生まれの画家フランシス・ベーコンの絵は、パンク的だ。映画監督リドリー・スコットやデヴィト・リンチ、ベルトリッチの映像にも影響を与えた。スコットの「エイリアン」を見たとき、ベーコンの肖像画…

 落合淳思『殷―中国史最古の王朝』

落合淳思『殷―中国史最古の王朝』 殷は3000前の紀元前16世紀から紀元前11世紀の中国最古の王朝である。いま殷跡の発掘など考古学史料で、その歴史はかなり明らかにされつつある。後代に作られた文献資料は少なく信憑性が薄い。落合氏は、1000年…

細野透『竜安寺石庭』

細野透『竜安寺石庭』 ミステリの暗号の解読のようで、細野氏の本は面白い。世界遺産・竜安寺の枯山水の石庭は、白砂に大小15石が配置されている。この庭のテーマ、五群十五石の配置の意味、構図の秘密には、昔から様々な解釈がされてきた。細野氏は、55…

大賀祐樹『希望の思想 プラグマティズム入門』

大賀祐樹『希望の思想 プラグマティズム入門』 プラグマティズム思想を紹介した本だが、大賀氏は、哲学思想から生じた社会思想の面に力を入れている。大賀氏によると、プラグマティズムは、「相容れない『信念』をもち、対立し合う人びとが、そうした相克を…

後藤謙次『平成政治史3』

後藤謙次『平成政治史 3』 後藤氏の労作の第三巻である。この巻では、2006年第一次安倍晋三内閣から。民主党への政権交代による最後の政権・野田佳彦内閣(2012年)まで描かれている。政治部記者後藤氏の、政治現場での綿密な取材に裏付けられた厖…

杉山正明『大モンゴルの世界』

杉山正明『大モンゴルの世界』 グローバル時代に入った今、欧米中心史観の「世界史」は大きく書き換えられようとしている。その一局面として重視されるのは、13世紀のモンゴル帝国であろう。ユーラシア大陸に、海と陸のグローバル帝国を作り上げ、世界史の…

魚津郁夫『プラグマティズムの思想』

魚津郁夫『プラグマティズムの思想』 アメリカ現代思想であるプラグマティズムを、パースからジェイムズ、ミード、デュ−イ、モリス、クワインさらにローティまでの思想を紹介している。教科書的かもしれないが、魚津氏の見方が一貫しているのでわかりやすい…

大倉隆二『宮本武蔵』

大倉隆二『宮本武蔵』 宮本武蔵のイメージは吉川英治の小説や.大河ドラマなどで創られている。だが、信頼出来る史料や文献が限られ、吉川も江戸時代に肥後で書かれた伝記「二天記」をもとにしていて、大衆芸能で虚構化されたものである。「忠臣蔵」に似てい…

イングラム『僕はポロック』

イングラム『僕はポロック』 20世紀アメリカの抽象表現主義の画家ジャクソン・ポロックを、イングラム氏は、アークル氏のイラスト絵で的確に描き出す。ポロックは、日本だったら破滅型作家といわれただろう。私はジャズ歌手ビリー・ホリディを連想した。 …

ウォー『ピンフォールドの試練』

イーヴリン・ウォーの小説を読む② イーヴリン・ウォー『ピンフォールドの試練』 ウォーの小説は、風刺と諧謔に満ちている。読んでいるうちに引き込まれ、苦悩と闘っているのに、笑ってしまう。この小説は、50歳の中年小説家が、転地療養のためセイロンまで…

岡本裕一朗『フランス現代思想史』

岡本裕一朗『フランス現代思想史』 日本でも1980年代前後に「ニューアカ」などで、フランス現代思想が流行した。だがデリダの死(2004年)以前から、終わったという風潮がある。日本は相変わらず「様々な意匠」として思想をとらえているのかと思う。…

イングラム『僕はダリ』

キャサリン・イングラム『僕はダリ』 「芸術家の素顔」シリーズと銘打たれたイングラム氏の文章と、アンドリュー・レイ氏のイラスト絵の本は、見事な出来栄えである。『僕はウォーホル』に次ぐ本で、20世紀シュールレアリズムの画家ダリの生涯と作品を描い…

ウォーホル『ぼくの哲学』

アンディ・ウォーホル『ぼくの哲学』 イングラム『僕はウォーホル』 20世紀ポップアートの革命を起こしたウォーホル。マリリン・モンローから毛沢東や、キャンベルスープ缶までサンプリングした作品は大きな影響を及ぼした。『ぼくの哲学』は、ウォーホル…