2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『中勘助詩集』(谷川俊太郎編)

『中勘助詩集』(谷川俊太郎編) 子どもの世界を子どもの眼で描いた名作『銀の匙』の中勘助は、若い時から詩歌に親しんだと和辻哲郎は言う。(岩波文庫『銀の匙』 解説)中勘助の散文は、日本語が磨きに磨かれ精密で円やかである。私が好きな短文は『母の死…

松沢裕作『町村合併から生まれた日本近代』

松沢裕作『町村合併から生まれた日本近代』 平成11年に「平成の大合併」といわれる町村合併が行われた。全国3232を数えた町村はいまや1727に減少した。明治維新以来「三大合併」といわれ、明治7年7万280あった町村が明治22年の「明治の大合…

ディクソン『科学と宗教』

トマス・ディクソン『科学と宗教』 科学と宗教との関わりは西洋史では一つの課題だった。17世紀のガリレオ裁判から20世紀アメリカのダーウィン進化論裁判まで、その対立・闘争の局面が強調されてきた。ディクソン氏によれば、1960年代以後「科学と宗…

西島建男『逆転の読書』

西島建男『逆転の読書』 自己宣伝になって恐縮ですが、このブログ「西島建男の読書日記」で書いたコラムを340編を選んで本にしたものです。横断的読書で「世界を読む」「歴史を読む」「芸術を読む」「科学を読む」「「社会を読む」「文学・思想を読む」の…

鈴木恵美『エジプト革命』

鈴木恵美『エジプト革命』 鈴木氏のこの本を読んでいて、私は1917年のロシア10月革命の現場の臨場感を深い洞察力で描いたジョン・リードのドキュメント『世界をゆるがした10間』(岩波文庫)を連想した。2011年エジプトのタハリール広場でムバー…

『窪田空穂歌集』

『窪田空穂歌集』 明治・大正・昭和と90歳近い生涯を生き、2千首近い短歌を作った窪田空穂は、斎藤茂吉や北原白秋のような歌人とは違い、流派もなく庶民としての「心的記録」を短歌で綴った。だが、私は窪田の「挽歌」に凄さを感じる。さらに、短歌だけで…

濱田恂子『入門近代日本思想史』

濱田恂子『入門 近代日本思想史』 入門となっているように、明治の福沢諭吉から、大正の西田幾多郎を経て、平成の鷲田清一まで50人ほどの思想の流れを記述したもので、教科書的に思えるかもしれないが、思索は深い。濱田氏の現代における「痩せ細る哲学」…

「中央公論」12月号『壊死する地方都市』

「中央公論」12月号『壊死する地方都市』 衝撃的な特集である。増田寛也氏と人口減少問題研究会の「2040年、地方消滅。『極点社会』が到来する」を読むと、地方が消滅する時代が来るというのだ。人口減少の大波が先ず地方の小規模自治体を襲い、その後…

ロマン・ロラン『ミケランジェロの生涯』

ミケランジェロを読む② ロマン・ロラン『ミケランジェロの生涯』 ロマン・ロランはミケランジェロを「悲劇の物語」として描いている。悩める人に悩みの友達を与えようと思いながら、さらに悩みを加えたかと気にしている。貧困、病気、不遜、人間の悪意、孤独…

木下長宏『ミケランジェロ』

ミケランジェロを読む① 木下長宏『ミケランジェロ』 木下氏はミケランジェロを「混沌(カオス)を生きようとした芸術家」という視点で描く。レオナルド・ダ・ビンチを「コスモス」的な理性と、秩序と科学的観察の人とし、ミケランジェロのカオス的考えと比較…

大江健三郎『晩年様式集』

大江健三郎『晩年様式集』 この大江氏の小説の最後に「形見の歌」があり、感動させられた。70歳のとき初孫をみて「この子の生きてゆく歳月は、その苛酷さにおいて 私の七十年を超えるだろう」で始まり、「否定性の確立とは、なまなかの希望に対してはもと…

北村亘『政令指定都市』

北村亘『政令指定都市』 2013年10月に政令指定都市・川崎市長選で、自公民相乗りの官僚候補を市民派の福田紀彦氏が破り当選した。その前にやはり政令指定都市・堺市で「大阪都構想」に反対する市長が維新の会の候補を破っている。私が住む横浜市では民…