2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ヘルマン『資本の世界史』

ウルリケ・ヘルマン『資本の世界史』 ドイツの経済ジャーナリスト・ヘルマン氏が書いた資本主義の通史である。文章もやさしくわかりやすい。古代ローマや中国で、なぜ資本主義が生じなかったのかから始まり、英国・産業革命からユーロ危機までの歴史を描いて…

ハワード『僕はカンディンスキー』

アナベル・ハワード『僕はカンディンスキー』 20世紀美術には、象絵画の出現がある。モスクワ生まれのカンディンスキーは世界戦争、ロシア革命,ナチ時代生き抜き、放浪しロシア、ドイツ、フタンスの多国籍者だった。ナチ時代、「退廃芸術」とか「ボルシェ…

待鳥聡史『代議制民主主義』

待鳥聡史『代議制民主主義』 いま代議制民主主義は批判され、空洞化が指摘されている。国会や地方議会の批判も多い。たとえば「塾議民主主義」は、専門家や官僚をまじえ国民・有権者が参加すすることにより「多数派専制」を補正しようとする。また「住民・国…

山田康弘『つくられた縄文時代』

山田康弘『つくられた縄文時代』 縄文時代が、世界的石器時代のなかで、日本史という「一国史」のなかでのみ作られた日本だけの特異な歴史観だという。国立歴史民族博物館教授で、先史学者・山田氏が論ずるのだから面白い。 戦前には「縄文時代」という言葉…

野坂昭如『人称代名詞』

野坂昭如『人称代名詞』 作家・野坂昭如氏が亡くなった。私は『人称代名詞』が、小説として代表作だと思う。複雑な「私」と戦中・敗戦期の状況を、「俺」「お前」「彼」「「ぼく」「あなた」という人称で書かれていて、これまでもかと人称を変え、自分を見つ…

河原一久『スター・ウォーズ論』

河原一久『スター・ウォーズ論』 娯楽映画は、最近シリーズ化する。寅さん映画のようだ。だが007も、ハリーポッターも、スター・ウォーズも面白くて人気がある。1977年に始まったスター・ウォーズはエピソードとい形で、神話的起源・系譜まで発展して…

ヴォーゲル『訒小平』

エズラ・F・ヴォーゲル『訒小平』 アメリカの社会学者・ヴォーゲル氏といえば、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を書いて、日本でもベストセラーになった。今回は『現代中国の父 訒小平』(日本経済新聞出版社・2013年)という大著を書き、中国。香港…

シェイクスピア『ヴェニスの商人』

シェイクスピア『ヴェニスの商人』 諷刺的喜劇である。ユダヤ人金貸し・シャイロックは、誇張的に道化役として描かれているし、判事に仮装する貴婦人ポーシャは、宝塚のように男装の麗人である。シャイロックの娘ジェシカと駆け落ちするロレンソーも、モリエ…

マンケル『殺人者の顔』

ヘニング・マンケル『殺人者の顔』 かつて故・作家の小田実は、私にミステリは社会学よりも、その社会の病巣を良く現らわしていると語ったことがある。この北欧警察小説を読み、それを実感した。いまならカルチュラル・スタディズの格好の題材になる。 スウ…

安藤宏『「私」をつくる』

安藤宏『「私」をつくる』 日本近代小説の特徴として「私小説」があり、これに対して「本格小説」でないという批判が長年続いてきた。近代西欧小説を模範とした場合、日本小説の「半近代性」だとされた。小林秀雄、伊藤整、平野謙などの論考がある。だが最近…

シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』

シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』 シェイクスピアの演劇は、場面転換が次々と起こる。「幕」の劇でなく「場」のドラマである。映画やTVドラマのように、スピード感がある。このドラマも歴史的事件を扱っているためか、場面転換がアクション映画のよ…