2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

フィリップ・ハウス『なぜ蝶は美しいのか』

フィリップ・ハウス『なぜ蝶は美しいのか』 蝶は驚異的な生物である。何千キロも飛んで繁殖する。太陽を羅針盤として正しい方向をみつける。1億匹の集団移動するアメリカのオオカバマダラの凄さ。 この本は、蝶の羽の多様な美しい模様を、世界中の蝶や蛾の…

ヘリゲル『日本の弓術』

オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』 昭和12年に出版されたドイツの哲学者・ヘリゲルの、禅仏教をもとにした弓術論である。いまや弓道はスポーツ化してしまったが、日本伝統の武道の根底にある精神を、西欧人がいかにとらえたかがわかり興味深い。ヘリゲル教…

西島建男『続・逆転の読書』近刊お知らせ

西島建男『続・逆転の読書』近刊お知らせ 私の「読書日記」は920回を超えました。2013年12月に、そこから280編を選び『逆転の読書』(文芸社)を出版しました。今回それ以後の「読書日記」から、160篇を選び、『続・逆転の読書』を8月に出版…

野口悠紀雄『戦後経済史』

野口悠紀雄『戦後経済史』 戦後70年に、野口氏が自分史を重ねながら、戦後経済史を語っていくのが面白い。野口氏は1945年東京大空襲で下町の防空壕から窒息死寸前で助け出され、父は戦死し、母子家庭で戦後生活を始める。野口氏の「1940年体制史観…

芳川泰久『謎とき 失われた時を求めて』

芳川泰久『謎とき 失われた時を求めて』 仏文学者・芳川氏のプルースト『失われた時を求めて』論である。20世紀の古典でもある長編小説を読み解くのは、なかなか難しい。多くのプルースト論もある。芳川氏は仏文学者らしく「無意志的想起」という記憶論の…

ホッファー『現代という時代の気質』

エリック・ホッファー『現代という時代の気質』 1973年に出版されたのが、2015年文庫化された。ホッファーといえば、アメリカで正規の教育を受けず「沖仲仕の哲学者」といわれ、1964年にカリフォルニア大学教授にまでなった。『波止場日記』(み…

T・ヤンソン『誠実な詐欺師』

T・ヤンソン『誠実な詐欺師』 フィンランドの作家・画家ヤンソンは、不思議な作家だ。児童文学で「ムーミン」という子供時代を描いたと思ったら、ポスト・ムーミンでは老人の生態を数多く小説で描く。この小説も初老の裕福な一人暮らしの女性芸術家が、主人…

V・ムラデノフ『海洋生物学』

V・ムラデノフ『海洋生物学』 海の生態学の全貌がわかる本である。海洋という環境の説明から始まって、海洋の第一次生産者であるシアノバクテリアや、珪藻、カイアジ類など植物、動物プランクトンから論じられている。 そこから沿岸域のケルプの森の生物群…

佐々木正人『新版 アフォーダンス』

佐々木正人『新版 アフォーダンス』 この旧版が出た1994年には、「感覚刺激からの入力を脳が処理して運動を制御する」という伝統的考え方に反対して、環境にたいする運動行為による生態学的協調システムによる「知覚の束」が、認知だという見方は新鮮だ…

伊福部昭『音楽入門』

伊福部昭『音楽入門』 作曲家・伊福部昭といえば、映画「ゴジラ」の映画音楽で有名だ。だが、2014年に生誕100年記念がなされた戦後日本の偉大な作曲家の一人である。アイヌ音楽にも影響を受け、日本の大地(特に北海道)に根付いた伝統を踏まえた作品…

冨原真弓ら編『トーヴェ・ヤンソン』

冨原真弓ら編『トーヴェ・ヤンソン』 ヤンソンといえば、フィンランドの芸術家で「ムーミン」を書いた作家である。冨原氏といえば、ムーミン9作品などの翻訳者・紹介者で、ドイツの児童文学者・ミヒャエル・エンデの訳者・子安美知子氏に匹敵する訳業である…

W・アーサー『テクノロジーとイノベーション』

W・アーサー『テクノロジーとイノベーション』 かつて経済学者シュムペーターは、イノベーションによる創造的破壊で、経済発展が行われるとした。(『経済発展の理論』岩波文庫)だが、複雑系経済学者・サンタフェ研究所教授・アーサー氏は、テクノロジーが…

高階秀爾『ニッポン・アートの躍動』

高階秀爾『ニッポン・アートの躍動』 21世紀の日本美術の最前線の画家、写真家36人の作品を、西欧美術史の高階氏が躍動する創造活動として紹介している。21世紀の日本美術の創造は、若い創作者によって、世界的な作品を生み出し、多様・多彩な絵画が創…

小左田定雄『米朝らくごの舞台裏』

小佐田定雄『米朝らくごの舞台裏』 『桂米朝』(「ユリイカ」2015年6月号) 桂米朝さんが亡くなった。小佐田氏の本には、速記での「米朝上方落語選」など活字化された本や、レコード、カセットテープ、CD、DVDな、音声や映像の資料情報が載っていて便利…