2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

和田昌親『ブラジルの流儀』

和田昌親編著『ブラジルの流儀』 ブラジルの国民性を「社会・生活」「経済・産業」「文化・歴史」「サッカー・スポーツ」に分けて、67編のコラム形式で書かれていて面白い。「なぜみなアバウトで、フレンドリーで、楽天的なのか」では、時間でも3時とは3…

堀坂浩太郎『ブラジル』

堀坂浩太郎『ブラジル』 21世紀の主役ともいわれ、発展著しいBRICsの一国に数えられ、サッカーW杯ついでリオ五輪開催も決まっているブラジルを、1980年代の軍事政権終了から債務危機、90年代の民政移管へ、21世紀の民主主義政権下の「社会開発国…

金子啓明『仏像のかたちと心』

金子啓明『仏像のかたちと心』 白鳳から天平(7世紀から8世紀)の仏像を取り上げて、そのかたちと支える心・精神性を論じた本で、「国宝薬師寺展」や大盛況だった「国宝阿修羅展」を手がけた金子氏だけあって仏像論として面白い。白鳳時代の中宮寺・半跏思…

ヴェルヌ『動く人工島』

ジュール・ヴェルヌを読む② 『動く人工島』 福島原発事故のあと、この幻想冒険小説(1895年刊)を読むとヴェルヌの先見性がよく分かる。オーウェル『1984年』と同じようなディストピア小説である。巨大な人工島スタンダート島を作り1万人が生活する…

フロム『自由からの逃走』

「自由論を読む⑤」 エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』 社会学化したフロイド主義によって、近代人の「社会的性格」という視点から説いた自由論の名著だろう。近代の個人の外的権威からの解放と自由の多義的な確立が、競争社会の中で孤独と、個人の無意味…

椎名誠『十五少年漂流記への旅』

椎名誠『「十五少年漂流記」への旅』 椎名氏の読書法は、行動的読書法ともいうべきもので、本をテコとして好奇心を満たすためフィイクションであろうと、その現地舞台を訪れることである。ヘディン『さまよえる湖』を読めば楼蘭まで旅をする。江戸期大黒屋光…

ヴェルヌ『十五少年漂流記』

ジュール・ヴェルヌを読む① 『十五少年漂流記』 何回読んでも面白い。少年冒険小説の古典である。孤島への漂流とサヴァイバルの冒険は「ロビンソン・クルソー漂流記」が先駆けだが、大人で個人のクルソーと異なり、ヴェルヌには「子供の発見」があり、8歳か…

吉田秀和『二十世紀の音楽』

吉田秀和『二十世紀の音楽』 2012年5月亡くなった吉田氏は、『主題と変奏』の著作でバッハやシューマンなど古典音楽の複雑で精妙な批評家だったが、それを20世紀音楽という前衛音楽つなげて論じようとしたのがこの本である。1950年代ヨーロッパに…

デュビュイ『ドイツ哲学史』

モーリス・デュビュイ『ドイツ哲学史』 フランス哲学教授のドイツ哲学史だから、あまりにもフランス的明晰さでかかれていて、その汎神論的な「宗教的性格」が見事に分析されすぎているが、ナチドイツ時代に捕虜収容所にいただけあって、ドイツ哲学の問題性も…

戸部良一『失敗の本質』

戸部良一ら『失敗の本質』 8・15の敗戦記念日に読みたい第二次世界大戦で敗北した日本軍の組織的研究である。東電の福島原発事故以後読まれているという。6つの戦闘で日本軍がなぜ敗れたかを分析し、失敗の本質を抉り出している。戦史の社会科学による解…

バーリン『自由論』

「自由論を読む④」 アイザィア・バーリン『自由論』管理社会であり、画一性で体勢順応社会、情報操作のメディア社会、つくられた異分子への「いじめ社会」で読む自由論の古典だろう。バーリンはミルの自由論を発展させて、多すぎる自由を目の前にして恐れお…

ラブキン『イスラエルとは何か』

ヤコヴ・M・ラブキン『イスラエルとは何か』 スピルバークの映画「ミュンヘン」(2005年)では、テロ首謀者のパレスティナ人をイスラエル人実行部隊が暗殺する。そこにはシオニズムによるイスラエル人工国家建設がメシア主義の理想の達成なのか、西欧的…

橋本治『浄瑠璃を読もう』

橋本治『浄瑠璃を読もう』 浄瑠璃論でもあり、江戸文化論でもある。私は「菅原伝授手習鑑」の「寺小屋の場」を歌舞伎や文楽で見ると、涙がどうしても出る。自虐的忠義のためわが子を犠牲にする不合理は、分かっていても涙が出る。浄瑠璃のストーリーは複雑怪…

国枝昌樹『シリア』 ロンド『シリア』

国枝昌樹『シリア』 フィリップ・ロンド『シリア』 シリアの内乱が続いている。2011年エジプト、リビアでの「アラブの春」とは違うようだ。アサド政権はなぜつぶれないのかについての元駐シリア大使だった国枝氏の分析は、シリアの内情をよく掴んでいる…