2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『対訳 ディキンソン詩集』

『対訳 ディキンソン詩集』アメリカ19世紀ホイットマンと同時代の女性詩人であるが、なんと対照的なのだろう。ホイットマン「草の葉」では、自己肯定と拡大、行動的で「野生の叫び」のような詩を歌うが、ディキンソンは自己否定と縮小、ひきこもり的隠遁、…

『歴博・12年11月号沖縄特集』

『歴博・2012年11月号・特集沖縄』 国立歴史民俗博物館では、2013年3月に民俗展示室がリニューアルオープンされる。それにあわせて刊行された特集である。「沖縄イメージの形成」「沖縄戦跡と観光」「西表島の自然」の三つのテ^マが設定されてい…

ローレンツ『人イヌにあう』

コンラート・ローレンツ『人イヌにあう』ミステリーチヤンネルでオ−ストリアの警察犬レックス(LEX)を楽しみに見ている。あのシエパートの主人刑事への忠誠と犯罪者を追い詰めていく凄さが好きだ。ソフトバンクCM白戸家のイヌも思慮深げに見えて好きだ。他…

伊藤正直『金融危機は再びやってくる』

伊藤正直『金融危機は再びやってくる』 表題は刺激的だが、内容は国際金融危機の原因を、国際金融システム、経済政策思想、世界経済編成の三点から考えたグローバル化時代の経済学である。伊藤氏は1970年代以後何故金融危機が繰り返し発生するのかを三点…

道端齋『生元素とは何か』

道端齊『生元素とは何か』 生元素とは生命体を構成している30種類の元素を指す。137億年前ビッグバンで誕生した宇宙は、大量エネルギーを素粒子に転換し、陽子と電子が出会って最初の原子水素ができ、ヘリウム、リチウムが続く。その原子雲の核融合で、…

猪木武徳『経済学に何が出来るか』

猪木武徳『経済学に何が出来るか』 経済学は合理的で独立した個人を想定すし、この「経済的人間」に限定して理論がつくられる。猪木氏は、人間には経済的効用を最大化する合理的欲望だけでなく、不完全な知識と不合理な欲望と価値に突き動かされる「人間的自…

藤山直樹『落語の国の精神分析』

藤山直樹『落語の国の精神分析』 精神分析学者の落語論で面白い。幼稚園の時から落語家になりたくて、いまも素人落語家として落語を演じている精神分析家は、立川談志の没後1周忌に、談志の「死の影」のもとにこの本をまとめ、巻末にはその弟子立川談春との…

長田弘『アメリカの心の歌』

長田弘『アメリカの心の歌』 アメリカは歌の国であり、その変わらぬ主題は「私の生き方」としてのアメリカだという長田氏のカントリー・ソングを中心としたアメリカ論である。 長田氏はトム・T・ホールの歌について「大きな国としてのアメリカでなく、小さな…

蒲田東二『古事記ワンダーランド』

鎌田東二『古事記ワンダーランド』 「古事記」が編纂されてから1300年である。鎌田氏は宗教哲学者だが神道ソングライターでもあり、この古事記論も民俗芸能史的視点(折口信夫的といつていい)が強くでている。それに、津田左右吉から始まり、上山春平、…

莫言『赤い高梁』

莫言『赤い高梁』 莫言の小説は、古代からの野生の生命力に溢れた人物が主人公になる。背景には古代からの村落共同体と家族の系譜がある。野生の生命力は残虐な生死を伴う。その野生の行動力は、非現実的な中国小説の伝奇=武侠小説のような闘争をおこす。そ…

川嶋みどり『看護の力』

川嶋みどり『看護の力』 高齢者になると病院のお世話になることが多い。入退院を繰り返す。医師の治療は勿論だが、看護師の看護には頭が下がる。末期がんになると医師は治療が難しいが、看護師の看護は死ぬまで続く。 「看護とは、人間を人間らしく生かし、…

暮沢剛巳『自伝でわかる現代アート』

暮沢剛巳『自伝でわかる現代アート』 芸術家の自伝によりながら、現代アートを語った異色な本である。自伝という自己言及の孤独な作業は、自己への偽りもふくまれているから、なお面白いともいえる。またとりあげられた8人が建築家フランク・ロイド・ライト…