2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

合田正人『吉本隆明と柄谷行人』

合田正人『吉本隆明と柄谷行人』 現代思想を吉本氏と柄谷氏とを対比しながら、第三項として鶴見俊輔氏を入れて「いかに共同幻想論と交通空間論の対立と相補性を解体するかという意図」で合田氏が書きあげた力作だと思う。初期の吉本思想に柄谷思想は良き理解…

アリス・マンロー『イラクサ』

アリス・マンロー『イラクサ』 2013年ノーベル文学賞受賞のカナダの女性作家マンロー氏の短編小説集を読む。マンロー氏は短編小説しか書かないというが、短編一篇に一人の人間の人生が凝縮されていて、長編小説を読んだような気にさせる。チエホフに匹敵…

大野和基インタビュー編『知の最先端』

大野和基インタビュー編『知の最先端』 吉成真由美著『知の逆転』もそうだが、世界の知識人のインタビューは取材の準備など苦労が多く大変な仕事だと思う。この大野氏のインタビューもいま世界の先端にいる知識人へのインタビューで面白く読んだ。コロンビア…

リルケ『マルテの手記』

「単独者の文学を読む」②リルケ『マルテの手記』 「単独者の文学」である。そこには孤独と死と敗残が満ち溢れている。またリルケ的な「愛」の観念も。マルテが、リルケ自身のように、生まれたチエコ・プラハの故郷・家族・文化伝統から逃れ、世界各地を放浪…

パウル・ベッカー『オーケストラの音楽史』

パウル・ベッカー『オーケストラの音楽史』 ベッカーといえば『西洋音楽史』(河出文庫)という名著がある。この本は1936年に書かれたもので、オーケストラと作曲家の関わりを、ハイドンからストラビンスキーまで200年の歴史を、音楽だけでなく広い西…

フェリエ『フクシマ・ノート』

ミカエル・フェリエ『フクシマ・ノート』 私はこの本を読んで、大江健三郎氏の『ヒロシマ・ノート』(岩波新書)に匹敵する東日本大震災と福島原発の思索的ルポを持ったと感じた。それも20年日本在住のフランス人作家によって。また関東大震災を記録した当…

青木美智男『小林一茶』

青木美智男『小林一茶』 青木氏は日本近世史の歴史学者だが、一茶の俳句に「世直し」という言葉がしばしば出てくるのに興味をもち研究を始めた。一茶はメモ魔というほど、膨大な日記、書簡、全国俳諧仲間との交流記録、作品収集さらに読書・学習記録を残して…

山崎亮『コミュニティデザインの時代』

山崎亮『コミュニティデザインの時代』 孤立死や無縁社会といわれ、つながりが分断された社会になりつつあるという。人口減少社会や高齢化社会により中山間離島地域では、限界集落も問題になってきている。「つながり」を作り出す社会が、新しい公共として求…

ギッシング『ヘンリ・ライクロフトの私記』

「単独者の文学を読む」① ギッシング『ヘンリ・ライクロフトの私記』 私にとっては、ライクロフトは老後の理想である。南イングランドの田園に隠棲し親戚の遺産(年金生活)で悠々自適の生活をおくり、家政婦一人に家事を任せ、散歩と読書三昧に耽る。おひと…

五十嵐敬喜『「国土強靭化」批判』

五十嵐敬喜『「国土強靭化」批判』 五十嵐氏の本を読んで、消費税が社会保障費ではなく、公共事業費に使われる仕掛けが、消費増税法の附則八条二項に明記されているのを知った。「事前防災及び減災等に資する分野に重点的に配分する」という条項である。五十…

開沼博、山崎亮ら『ニッポンのジレンマ ぼくらの日本改造論』

開沼博、山崎亮ら『ニッポンのジレンマ ぼくらの日本改造論』 この本はNHKEテレ「ニッポンのジレンマ」における討論を収録したものである。1970年代以降生まれの「失われた世代」の学者たちが、東日本大震災の「復興論」と日本の「地域活性化作戦」…

佐々木敦『ニッポンの思想』

佐々木敦『ニッポンの思想』 ゼロ年代末に書かれた「ニューアカ以降の現代思想の歴史教科書」と佐々木氏がいう本だが、今読んでみても80年代からの日本思想の流れが良くわかる。 80年代ニューアカの浅田彰、中沢新一から柄谷行人、蓮見重彦、90年代の…

国分功一郎『来るべき民主主義』

国分功一郎『来るべき民主主義』 東京・小平市に住む哲学者の国分氏が、たまたま小平市の雑木林480本を伐採し、200世帯以上の民家を立ち退きさせ、200億円の税金を使う巨大道路(都道328号線)建設の説明会に行き、なにかおかしいと実感したとこ…