2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

竹内敬二『電力の社会史』

竹内敬二『電力の社会史』 今や日本は原発の「廃炉の時代」に入ろうとしているという。(朝日新聞「GROBE」7月21日付)この竹内氏の本は、長年にわたり原子力、環境、エネルギーを取材してきた新聞記者が、日本のエネルギー政策の特異性と、東電など「9…

ベントン『生命の歴史』

マイケル・J・ベントン『生命の歴史』 生命の発生から人類誕生までの40億年の歴史を描いた本は数多くある。ベントン氏の本の特徴は、地質学や、地球物理学、同位元素化学だけでなく、分子生物学やDNA分析による分子時計や分子系統学、分岐分類学まで総合的…

芹田健太郎『日本の領土』

芹田健太郎『日本の領土』 国家の領土・領海はあくまでも人為的なものである。20世紀アフリカや中近東などでは、植民地からの独立の際に人工的に国境線が引かれる。だが古い国々では、過去からの先占から、戦争や侵略などで領土の国境が、歴史的に決められ…

ワアグナア『さすらいのオランダ人・タンホイザア』

ワアグナア『さすらいのオランダ人・タンホイザァ』 ワーグナーの生誕200年になる。この2作はワーグナーの初期の歌劇である。だがその後のワーグナーの歌劇の特徴が早くも出ていて私は好きである。どちらも中世ドイツの伝説をもとに、歌劇化されている。…

ゴルドーニ『珈琲店・恋人たち』

ゴルドーニ『珈琲店・恋人たち』 18世紀バロック演劇の喜劇作品で、ヴェネチィアの劇作家ゴルドーニのドラマである。田之倉稔にいわせると、バロック演劇は「流動性」と「移ろいやすさ」が特徴で、「軽さ対重み、時間対永続」の対立を扱い、変身や二重性を…

サルトル『自由への道』(その3)

サルトル『自由への道』(その3) 第三部「魂の中の死」 第四部「奇妙な友情Ⅰ) この小説は、フランス20世紀を描いている。世界大戦、敗北、占領、捕虜収容所、コミュニズムと党、レジスタンスが様々な手法で、全体小説の構想で書かれている。だが、長編…

西内啓『統計学が最強の学問である』

西内啓『統計学が最強の学問である』 京都府立医学大が、高血圧治療薬ディオバンの効果を調べた臨床研究論文に、データ操作による効果水増しがあったという調査結果を発表した。おまけにデータの統計解析をしたのが、販売元の製薬会社ノバルティスの社員だっ…

ルルフオ『ペドロ・パラモ』

ファン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』 20世紀中葉・メキシコの作家・ルルフォの今や古典となった傑作小説である。メキシコ近代の風土が色濃く反映されている。70の断片の連環で、過去と現在、生と死が、綯い交ぜになって、終末が最初に戻る円環小説である…

豊下楢彦『「尖閣問題」とは何か』

豊下楢彦『「尖閣問題」とは何か』 尖閣問題は、複合的な問題が累積して、いまや日中の摩擦の最大の問題に発展してしまった。豊下氏の本を読むと、尖閣問題とは海底石油資源問題であり、日米安全保障問題であり、植民地・歴史認識問題であり、領土問題でもあ…

加藤征治『リンパの科学』

加藤征治『リンパの科学』 人間の体液は、血管とリンパと脳骨髄液の三つがある。これらの体液は、加藤氏によれば臓器内の細胞の水分や老廃物など排出を行い、循環によって生命の恒常性を維持しているという。リンパは「白い血液」とか「第二の体液循環系」な…

円谷英明『ウルトラマンが泣いている』

円谷英明『ウルトラマンが泣いている』 ウルトラマンの特撮映画を作り出した円谷英二の孫・英明氏が、創業者一族がいかに失敗し、円谷プロから追放され没落していったかを述べた本である。7歳の英明氏が1966年に、命がけの特撮現場を初めて見学し衝撃を…

大川玲子『イスラーム化する世界』

大川玲子『イスラーム化する世界』 イスラーム教では、聖典『クルアーン(コーラン)』の解釈は、ウラマーという宗教学者が権威をもち、伝承主義に基づき厳密にされてきた。この伝承主義にたいして、さらに原初のクルアーンを教条的に解釈する「原理主義」が…

シュローサー『ファストフードが世界を食いつくす』

エリック・シュローサー『ファストフードが世界を食いつくす』 マクドナルドなどファストフード・チェーンは、安価で均質な食べ物をグローバルに供給し、雇用も生み出している。だがシュローサー氏は、その利益が社会的損失を生み出していることを告発してい…