2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

輪島祐介『創られた「日本の心」神話』

輪島祐介『創られた「日本の心」神話』 サントリー学芸賞を受けた若き音楽学者の戦後大衆音楽史である。戦前から戦後も含めての音楽史であり、ジャンルも演歌、歌謡曲、フォーク、Jポップ、ニューミュージックなど広い。さらにアメリカのジャズ、ロックなど…

「私見・選挙拒否論」

「私見・選挙拒否論」私は「選挙」が民主主義の核とは思えない。選挙は拒否すべきであり、職業政治家は限定すべきで、将来は全廃すべきと考える。 ① 選挙は自由でなく、特定政党や立候補したい人々しか選べない。私たち市民が選んだのでない人々が立候補して…

橋本卓典『捨てられる銀行』

橋本卓典『捨てられる銀行』 ジャーナリストによる地方銀行のドキュメントであり、金融行政の大きな変換もルポしている傑作だと思う。 2015年金融庁は森信親長官就任で大旋回した。私は、日銀・黒田総裁就任よりも、森長官の仕事こそ、人口減少時代に、…

堀有伸『日本的ナルシズム』

堀有伸『日本的ナルシズムの罪』 新書版だが、深い思索に満ちている。精神科医で、いま福島県南相馬市で精神医療に携わる。 精神医学からみて、西欧の「エディプス・コンプレクス」と「日本的ナルシズム」を比較すると、どちらも母子の一体感から生じる。エ…

レベル『ナチュール』

エマニュエル・レベル『ナチュール』 フランスの気鋭の音楽学者による「音楽と自然」の関わりを、ルネスサンス期から、現代音楽まで究明しようとした力作である。 体系的というのでなく、ルーブル美術館のように、ジャンル別に芸術作品を展示するような書き…

ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』

「ヴィクトル・ユゴーを読む④」 ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』)(上) 15世紀のパリの都市や民衆が生き生きと描かれている。民衆たちが集合した場面から始まり、道化的な法王選出と行列と発展にいたる。枢機卿などのお偉方はちょっとしか出てこない…

佐藤慎一編『近代中国の思索者たち』

佐藤慎一編『近代中国の思索者たち』 19世紀末清朝崩壊期から1949年中華人民共和国成立期にかけての、中国思想界は「百家争鳴」的であり面白い。この本は魏源から毛沢東までの20人の代表的知識人の思想を紹介している。 編者の佐藤氏は、毛沢東思想…

中野京子『印象派で近代を読む』

中野京子『印象派で「近代」を読む』 印象派の本は多い。中野氏の絵画の本はシロウトにも素直に読める。ドガ「エトワール」、ゴッホ「星月夜」などオールカラーのメイン絵画26作品も新書にしては、きれいすぎる。 中野氏の見方は「光を駆使した斬新な描法…

ユゴー『ライン河幻視紀行』

「ヴィクトル・ユゴーを読む③」 ユゴー『ライン河幻視紀行』 私はユゴーのこの本を読んでいるとき、ユゴー版の松尾芭蕉『奥の細道』だと思った。詩人ユゴーは芭蕉と違い、ほとんど詩は書いていない。そのかわりに、伝説や民話が多くある。 ライン河にこんな…

ユゴー『エルナニ』

「ヴィクトル・ユゴーを読む②」 ユゴー『エルナニ』 ロマン主義は、自由主義でもある。この劇を読むと、シラーの『群盗』を思い出す。エルナニは貴族の子弟だが、国王に父を殺され、山賊になり、反乱を行う。ユゴーのこの戯曲は、ラシーヌやコルネイユなどの…

ユゴー『死刑囚最後の日』

ユゴー『死刑囚最後の日』ユゴー『死刑囚最後の日』 ロマン主義は理想主義である。フランス19世紀の作家ユゴーが、28歳の時書いた死刑廃止の小説だ。判決を受けて断頭台に昇る若者の牢獄での苦悶が如実に描かれている。 私も末期ガンで死期がいつ来るか…

ファクラー『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』

ファクラー『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』ファクラー氏は、日本で20年近くジャーナリズムの仕事をし、ニューヨーク・タイムズの元東京支局長だった。安倍政権の記者会見が、いかに事前に質問事項を提出するかに驚く。オバマ大統領の会見、自由に質…

坂元ひろ子『中国近代の思想文化史』

坂元ひろ子『中国近代の思想文化史』 力作である。19世紀清朝末から。中華人民共和国の成立、文化大革命から天安門事件まで視野が届いている。登場する知識人は、康有為、孫文、梁啓超、毛沢東、胡適など30人以上におよぶ。 儒教的世界観や仏教、道教な…

『牧野富太郎』

『牧野富太郎―なぜ花は匂うか』私が「近代奇人伝」を書くとしたら、牧野と南方熊楠は欠かせないだろう。「牧野日本植物図鑑」には、自ら収集した植物約40万枚が収められている。水中の食虫植物・ムジナモの発見者である。この本にも「世界的稀品ムジナモを…