2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

レイ・ブラッドベリ『華氏451度』

レイ・ブラッドベリ『華氏451度』 ブラッドベリが亡くなった。この本は1953年出版というからSFでは古典になる。私は、かつてトリュフォー監督の映画「華氏451度」をみて、それにつられ読んだ覚えがある。冷戦時代アメリカで反共のマッカーシズムが…

塚本勝巳『ウナギ大回遊の謎』

塚本勝巳『ウナギ大回遊の謎』 海洋学者による天然ウナギの産卵場を探して、太平洋マリアナ海溝周辺の広い海で卵や仔魚を発見する学術研究の大発見を記した本だが、私は海洋冒険小説を読むような興奮を覚えた。メルヴィルの小説「白鯨」は獲物として鯨を探し…

佐野眞一『東電OL症候群』

佐野眞一『東電OL殺人事件』『東電OL症候群』(その二) 東電女性社員殺人事件で、元被告ネパール人ゴビンダの再審決定の決め手になったのは、殺害現場にあったゴビンダと別の男の体毛と、女性の体内から取られた精液のDNAが一致、第三者(真犯人)がいた可…

佐野眞一『東電OL殺人事件』

佐野眞一『東電OL殺人事件』『東電OL症候群』(その一) 2012年6月7日東京高裁は、東電女性社員殺害事件で無期懲役服役中の元被告ゴビンダ・プラサド・マイナリの再審開始と刑執行停止を決定し、ゴビンダを釈放、その後自国ネパールに帰国となった。佐…

ケネス・クラーク『風景画論』

ケネス・クラーク『風景画論』 西欧風景画を論じた古典だろう。西欧ではパルチノン神殿時代にも、シャルトル大聖堂時代にも風景画は存在せず、17世紀に入って取り上げられ、19世紀に主導的芸術になり、20世紀には終焉を迎えている。クラークの風景画論…

小川勝『オリンピックと商業主義』

小川勝『オリンピックと商業主義』 オリンピックは曲がり角にきていると思う。21世紀はスポーツ・ナショナリズムの時代といわれるナショナルの過剰、情報・記号化する劇場型スペクタクルのスポーツ、過剰な身体のためドーピングに行き着く問題、そして異常…

コリン・ジョイス『驚きの英国史』

コリン・ジョイス『驚きの英国史』 今年は英国エリザベス女王即位60周年やロンドン・オリンピック開催などで英国ものもかなり出版されている。フリージャーナリスト・ジョイス氏のこの本は英国史のエピソードやトピックから、さらに英国人の国民気質まで抉…

多木浩二『スポーツを考える』

多木浩二『スポーツを考える』 スポーツとは何かを考える評論として色々な示唆を与えてくれる。多木氏は、近代スポーツがイギリスで何故生まれたたかをエリアス『文明化の過程』によって、身体的闘争・競争の「非暴力モデル」にあり、人為的なルール(規則)…

川島浩平『人種とスポーツ』

川島浩平『人種とスポーツ』 魅力的なテーマである。確かにオリンピック陸上100m決勝で登場した選手56人は、ここ30年で総て「黒人」である。2012年現在陸上世界記録保持者は100mボルトからマラソン・マカウまで13種目ほとんど「黒人」が持…

吉田徹『ポピュリズムを考える』

吉田徹『ポピュリズムを考える』 欧州債務危機でポピユリズムの政治の台頭が言われる。日本でも1990年代以後、現状打破で人気を得る政治家が出現してポピュリズム的政治が注目されている。サッチャーから小泉純一郎、サルコジ、ベルルスコーニまで、さら…

大久保純一『カラー版北斎』 

大久保純一『カラー版 北斎』 浮世絵で北斎は「彫り」広重は「摺り」と言われてきた、北斎は卓越したデッサンと動的な描線により造型的であり、広重は絢爛たる色あわせを重んじる色彩重視という。大久保氏はこの本のなかで両者の名所絵や花鳥画を比較し、リ…

シュネデール『グレン・グールド孤独のアリア』

シュネデール『グレン・グールド 孤独のアリア』 グレン・グールド、ジョナサン・コット『グレン・グールドは語る』 今年はカナダのピアニスト、グレン・グーグルドの没後30年に当たる。私はグールドのバッハやブラームスの演奏を聴くと、突飛な連想だが歌…