2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

森山徹『ダンゴムシに心はあるのか』

森山徹『ダンゴムシに心はあるのか』 我が家の小さな庭にもダンゴムシがいる。鉢植えを持ち上げると逃げ出す。触ると丸くなる。森山氏はこのダンゴムシに様々な行動実験をし、大脳がなくても「心」があることを実証しようとする。ダンゴムシの原意識に迫る面…

藤田令伊『フェルメール」

藤田令伊『フェルメール 静けさの謎を解く』 このところオランダ17世紀の画家フェルメールの人気が高い。日本でも展覧会がよく開かれ、フェルメール論も続々出版されている。小林頼子氏はフェルメールが愛される理由を①作品数が少ない希少性がある②光学画…

ザミヤーチン『われら』

ザミャーチン『われら』 1920年代ロシア(当時のソ連)で出版されたこの本は様々な読み方があるだろう。反ソ連の全体主義的計画経済の批判の書として、また個人崇拝批判の小説とも読める。現実と幻想が綯い交ぜになった魔術的リアリズムの前衛小説とも読…

大岡信『詩への架橋』

大岡信『詩への架橋』 詩人・評論家大岡氏の「詩と真実」(ゲーテ)であり「若き芸術家の肖像」(ジョイス)である。戦後すぐ中学生時代の同人誌「鬼の詞」から大学時代の同人誌「現代文学」まで読んだ詩や詩集から詩を読む体験の意味と自らが詩人になってい…

飯田哲也『エネルギー進化論』

飯田哲也『エネルギー進化論』 福島原発事故以後、脱原発のエネルギーシフトの方向が強まっている。飯田氏はエネルギー転換の唱道者であり、実践者でもあり、原発から自然エネルギー転換の活動家であるが、それだけでなく、大規模集中から小規模分散へ、中央…

ベラ・バラージュ『視覚的人間』

ベラ・バラージュ『視覚的人間』 1920年代映画の勃興期にだされた映画論の古典であり、映画という新興芸術への熱い思いが論じられている。これからは映画なしには文化史、民族心理学は書けないともいう。印刷術による読まれる精神に見える精神に変わり、…

松戸清祐『ソ連史』

松戸清祐『ソ連史』 ソ連の興亡史は20世紀視現代史の大きな主題だが、いい通史がなかなかない。ロシア革命から1991年のソ連解体までの70年間の歴史は。社会主義国家という実験であり、松戸氏によれば、ヨーロッパ近代の「対抗文明・対抗国家」だった…

鎌田浩毅『地学のツボ』

鎌田浩毅『地学のツボ』東日本大震災後、地球科学である地学を学びたくなった。鎌田氏によれば地学は20世紀になりコペルニクス的転換にあり、最先端の科学である。だが日本の高校生の地学履修率は7%であり、地震・火山・気象など日常の自然災害の列島に…

陳舜臣『中国画人伝』

陳舜臣『中国画人伝』 この本は13世紀元時代から20世紀初の清時代の中国の画人47人を扱っていて中国美術史ともいえる。黄公望、王蒙、文徴明、八大山人、石涛、金農、呉昌碩、斉白石、除悲鴻などの画人の人生や画風が紹介されている。 董其昌の「尚南…

サンデル『これから正義の話をしよう』

マイケル・サンデル『これから「正義」の話をしよう』 市場勝利主義の時代、市場化できない人間の市民生活の価値から市場の限界を考え、正義と善き生による「共通善に基づく政治」を探究するのが、サンデル氏の哲学である。サンデル氏の語り口が、現代が抱え…

円地文子『源氏物語私見』

女性作家と「源氏物語」(その③) 円地文子『源氏物語私見』 円地氏はこの本では、桐壺、藤壺、六条御息所、朧月夜など、当時最高貴族の女性が、行動の自由を束縛されている環境を破って、自分の意志や自我を通す強さが強調されている。桐壺は周囲からの嫌が…

田辺聖子『源氏紙風船』

女性作家と「源氏物語」(その②) 田辺聖子『源氏紙風船』 「源氏酔い・源氏狂い」と自称する田辺氏のこの本では、恋と愛の専売特許をもつ宝塚歌劇と似通うといい、文章も劇画風(夕顔が物の怪に襲われる場面や源氏が須磨に配流の時暴雨風にあう場面など)も…