2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

月村太郎『民族紛争』

月村太郎『民族紛争』 1989年から2009年にかけて国際社会において、武力紛争は130件起こっている。そのうち国家間戦争は8件に過ぎず、民族紛争など非国家アクター同士がほとんどという。月村氏は民族いう文化的共同体の紛争6事例を取り上げてい…

城山三郎『そうか、もう君はいないのか』

城山三郎『そうか、もう君はいないのか』 長年連れ添った妻が自分より先に亡くなる時、老年をむかえている夫の喪失感は深い。 城山氏のこの手記は、68歳の時にガンで死んだ妻との出会いから、長年の結婚生活を、自分史を交えながら、描いていく。その7年…

鈴木翔・本田由紀解説『教室内カースト』

鈴木翔・解説本田由紀『教室内カースト』 6月21日国会で「いじめ防止対策推進法」が成立した。いじめ対策が法制化でどのくらい出来るかは未知数である。だが、いじめの根源には生徒間の「地位」や「序列」という「スクールカースト」があるという鈴木氏の…

サルトル『自由への道』(その2)

サルトル『自由への道』(その2) 第二部「猶予」 「猶予」は、1938年9月23日から30日まで、第二次世界大戦勃発がミュンヘン会談で、一時猶予される時期を描いている。チェコへのヒットラーの領土要求に始まり、フランスでも動員が始まる。マチウ…

秋田茂『イギリス帝国の歴史』

秋田茂『イギリス帝国の歴史』 いま世界経済システムは、環大西洋圏からアジア太平洋圏に移りつつある。歴史研究でも世界の諸地域の比較や関係性を重視する新たな「グローバルヒストリー」が注目されている。秋田氏はその視点でイギリス帝国の長期の18世紀…

倉本一宏『藤原道長の権力と欲望』

倉本一宏『藤原道長の権力と欲望』 ユネスコの「世界記憶遺産」に、「慶長遣欧使節関係資料」と平安時代・摂関政治時代の藤原道長の自筆日記「御堂関白記」が登録された。倉本氏はこの「御堂関白記」を詳細に読んで現代語訳を成し遂げ、この本では道長という…

中島岳志『秋葉原事件』

中島岳志『秋葉原事件』 2008年6月秋葉原で無差別殺人事件を起こした加藤智大の軌跡を、生い立ちから事件まで取材し、裁判証言も丹念に傍聴し、なぜ事件を起こしたかを綿密に描いたノンフィクションの傑作である。当時「派遣切り」と「ネット掲示板」さ…

塩野七生『最後の努力』(「ローマ人の物語13巻」

塩野七生『最後の努力』(「ローマ人の物語」第13巻)3世紀末から4世紀にかけて、ローマ帝国再建立ち上がったディオクレティアス帝とコンスタンティヌス帝の時代を描いている。塩野氏によると両皇帝により、ローマ帝国は別の帝国に変わり、あと百年たら…

村上春樹『若い読者のための短編小説案内』

村上春樹『若い読者のための短編小説案内』 村上氏はアメリカ文学の翻訳者であり、40歳まで日本の小説をあまり読まなかったという。この本もアメリカの大学での日本短編小説の案内だが、村上氏の日本の小説観がでているし、村上文学の創作の在り方も見て取…

ガルブレイス『悪意なき欺瞞』

ガルブレイス『悪意なき欺瞞』 ガルブレイスの最晩年の経済エッセイで2004年に出版され、その2年後に死去した。経済学の通説と現実の間の溝が、金銭的利益のためいかに見えなくなり、あたかも真理のようにみせる「悪意なき欺瞞」をあばこうとしている。…

今野春貴『ブラック企業』

今野春貴『ブラック企業』 日本の若者の雇用問題は深刻化している。ゼロ世代の若者たちは、働けない「ニート」や非正規雇用の「フリーター」が問題になったが、いまや「シューカツ」問題から、「ブラック企業」という社会問題が出てきているからである。ブラ…

山口香『日本柔道の論点』

山口香『日本柔道の論点』 平成24年度から中学校で武道必修化がスタートした。武道のなかでオリンピック種目に成っているのは柔道だけである。だがロンドン五輪男子史上初の金メダル無し、金メダリストの不祥事、隠蔽された柔道事故の多さ、女子五輪代表の…

塩野七生『キリストの勝利』

塩野七生『キリストの勝利』(「ローマ人の物語14巻目」) ローマ帝国の4世紀のコンスタンティヌス大帝死後から、テオドシウス大帝の死までの歴史を描く。この巻ではキリスト教が国教になりいかに勝利していったかに焦点が当てられている。「背教者」とい…