2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

真野俊樹『入門 医療政策』

真野俊樹『入門 医療政策』 厚生労働省は9月27日、2010年度の国民医療費が前年度より3・9%増えて37兆4202億円になったと発表した。国民一人当たり約30万円弱で、過去最高である。65歳以上が55%だ。医療費は毎年年間1兆円以上増加し…

クンデラ『出会い』

「ミラン・クンデラを読む②」 『出会い』 クンデラが出会った人、芸術作品(小説・絵画・音楽・映画など)を、80歳の時に書いて出版した評論集である。このなかにはクンデラの精神が縦横に述べられている。「反現代的モダニスト」でポストモダンにより忘却…

クンデラ『笑いと忘却の書』

「ミラン・クンデラを読む①」 『笑いと忘却の書』 20世紀チェコの小説家クンデラのこの小説には、哀感ある笑いがある。クンデラはこの小説のなかで、物事の秩序のなかに与えられていた場所を突然奪われると「笑い」を引き起こすという。そう思われていたこ…

渡邊泉『重金属のはなし』

渡邊泉『重金属のはなし』 21世紀に入って鉱山開発が盛んという。鉱山企業の資本支出は1年で1・4倍。資源ナショナリズムは強まっている。重金属の製品は生活に欠かせない。鉄や銅、亜鉛にアルミを始め、ハイテク製品のレアメタルは、発光ダイオードや太…

アンダーソン『想像の共同体』

アンダーソン『定本 想像の共同体』 日中の領土問題で愛国主義が燃え上がっているとき、アンダーソンのナショナリズムの古典を読む。1991年に増補版が出た時読んだが、ナショナリズムの文化的起源や国民意識の起源を、ヨーロッパだけでなく、南北アメリカや…

高階秀爾『20世紀美術』

高階秀爾『20世紀美術』 20世紀美術は、日常的感覚世界の写実を拒否し、非古典世界を創造するため、「単純化」と「純粋化」の道を辿ると高階氏は書き始めている。セザンヌが形態の純粋性を求め、ゴーガンが色彩の純粋性を求めたところから、新造形主義や…

宇佐美圭司『20世紀美術』

宇佐美圭司『20世紀美術』 20世紀美術には好き嫌いがはっきりしている。反古典主義、反ロマン主義、反写実主義と「反」が並び、キュービズムとか抽象表現主義、ダダイズム、シュールなど「主義」が羅列している。西欧近代美術の極限を見極めようと「実験…

コリアー『収奪の星』

ポール・コリアー『収奪の星』 「天然資源と貧困削減の経済学」という副題が付いている。コリアーの立場は中庸で説得力がある。将来世代への責任を常に考え、自然資源を活用しながら、先進国に過大な要求をせず、世界10億人の最底辺の貧困を撲滅し、同時に…

ヴェルヌ『悪魔の発明』

「ジュ−ル・ヴェルヌを読む③」 『悪魔の発明』 SFにはマッド・サイエンティストものがある。科学倫理や生命倫理が説かれる前の時代、科学者が研究のため人類を危機に陥れるような発明を行うという物語ものである。ヴェルヌのこの小説もそのジャンルに入る…

刈谷剛彦『学力と階層』

刈谷剛彦『学力と階層』自由社会が進めば進むほど「格差社会」が激しくなる。経済、社会、文化だけでなく、初期条件である子供の教育、学校構造から階層化は始まっており、それがさらに社会の階層化を進めることを、教育社会学者・刈谷氏は実証的調査データ…

ローティ『連帯と自由の哲学』

「自由論を読む⑥」 R・ローティ『連帯と自由の哲学』 アメリカ哲学・プラグマティズムの自由論である。ローティがこの本で主張しているのは「(1)真理の試金石は、自由な議論だけである。(2)自由な議論は合意へと収斂するだけでなく、その反対に、新たな…

三好達治『詩を読む人のために』茨木のり子『詩のこころを読む』

三好達治『詩を読む人のために』 茨木のり子『詩のこころを読む』 詩人による詩作品の読解である。三好の本は島崎藤村から泣菫、白秋から萩原朔太郎、中原中也、堀口大学など戦前近代詩を扱い、茨木は谷川俊太郎、黒田三郎、岸田衿子、川崎洋、吉野弘、石垣…

村岡晋一『ドイツ観念論』

村岡晋一『ドイツ観念論』 ポストモダンの時代に、リオタールは「大きな物語」の終焉を述べていた。その時大きな物語とは、ドイツ観念論やマルクス思想など近代思想が想定されていた。だが村岡氏の本を読むと、ドイツ観念論は「理性の体系」「自由の体系」を…