2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

後藤謙次『平成政治史1』

後藤謙次『平成政治史1』 平成政治は、26年の間に18人の首相が交代し、1内閣の平均在任期間は平均1年4カ月、政党の乱立と離合集散の異常な時代だった。この本は、政治記者後藤氏が膨大なメモと政治家の肉声記録によって書いたドキュメントで力作であ…

松田美佐『うわさとは何か』

松田美佐『うわさとは何か』 うわさはもっとも「古いメディア」である、デマ、口コミ。流言蜚語、風評、都市伝説などは、ネット時代になっても隆盛している。石油ショックの時のトイレットペーパー騒動や豊川信用金庫取り付け騒ぎ、東日本大震災の時の買い溜…

稲葉剛『生活保護から考える』

稲葉剛『生活保護から考える』 稲葉氏は、過去20年間に3000人以上の方の生活保護の申請に立ち会ったという。生活自立サポートセンター・もやいを設立し、生活困窮者の支援を続けているだけあって、この本も説得力がある。先進国の現代的貧困は、複雑な…

池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』

池井戸潤『ルーズヴェルト・ゲーム』 企業小説やサラリーマン小説は、戦後の源氏鶏太「三等重役」以来あまり読んだことがない。今度池井戸氏の小説を読み、源氏との相違に気がついた。源氏の小説は、戦後復興から高度経済成長に向かう経済状況における新経営…

秋田巌『写楽の深層』

秋田巌『写楽の深層』 ユング派の精神科医が、江戸の浮世絵師・東洲斎写楽を深層心理学の手法で論じた本である。写楽は謎の浮世絵師として、これまでその正体探しが数多くなされてきた。近年阿波の能役者・斎藤十郎兵衛に固まりつつある。秋田氏の本は正体探…

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』 謎が多い小説である。謎とき小説だが、解かれない謎も多く残る。人生には因果関係が不明の謎に満ちているといえばそうだが。高校時代の5人の親友共同体から、突然原因不明の「絶交」を突き付けられた多…

柄谷行人『遊動論』

柄谷行人『遊動論』 柄谷氏は、『世界史の構造』で、「資本=ネーション=国家」を超える視点として交換様式から「遊動性」を主張してきた。交換様式Aは互酬(贈与と返礼)、交換様式Bは再分配(略取と分配)(強制と安堵)、交換様式Cは商品交換(貨幣と…

ジョルジュ・ミノワ『ガリレオ』

ジョルジュ・ミノワ『ガリレオ』 STAP細胞の発見論文の不正疑惑が報道されている時に、ガリレオの伝記を読む。ミノワ氏のこの本は2000年に出ていて、コンパクトにその実像を描いており、ガリレオの亡霊が、三世紀半もローマ教会と闘い続けたことまで…

グリマル『セネカ』

ピエール・グリマル『セネカ』 古代ローマの哲学者セネカの生涯と思想を描いた本である。グリマル氏はセネカが、フランスのラ・ロシュフコーやモンテーニュ、ラ・ボエシー、パスカル、ルソーの思想に大きな影響を与えたと述べている。 私はセネカがローマ皇…

国立歴史民俗博物館編『歴史にみる震災』

国立歴史民俗博物館編『歴史にみる震災』 国立歴史民俗博物館は、東日本大震災以後に震災と博物館活動・歴史叙述の総合研究を行っている。2014年3−5月に「歴史における震災」の企画展示をおこない、本書・展示図録を刊行した。この図録は、貞観大震災…

生源寺眞一『日本農業の真実』

生源寺眞一『日本農業の真実』 TTP問題で、日本農業は正念場を迎える。生源寺氏は日本農業の現実の姿を客観的に描きだし、いかに活路を見だせるかを考えている。食料消費者の視点もきちんと見通している。1993年のGATT・ウルグアイラウンドから、…

香月孝史『「アイドル」の読み方』

香月孝史『「アイドル」の読み方』 アイドル戦国時代といわれる。ご当地アイドルも盛んで、姫路市には黒田官兵衛ゆかりのご当地アイドルが生まれた。AKB48の五番目の集団「チーム8」は都道府県から一人ずつ選出し日本各地に行く「会いに行くアイドル」…

矢野久美子『ハンナ・アーレント』

矢野久美子『ハンナ・アーレント』 最近日本でもドイツ映画「ハンナ・アーレント」が上映された。20世紀のユダヤ系政治哲学者アーレントの思想は、ますます注目されてきている。矢野氏の本は、アーレントの激動の生涯を詳細に辿り、その思想を手際よく紹介…

チャンドラー『大いなる眠り』

チャンドラーを読む③ チャンドラー『大いなる眠り』 私立探偵マーロウの物語の諸構造 ① マーロウはチェスを事務所の机の上で「詰将棋」のように独りで行っている。作家・ウンベルト・エーコが007ボンド物語分析でいう「完璧に規制された『打ち駒』による…

池内了『宇宙論と神』

池内了『宇宙論と神』 「神」を媒介者として、人類2000年の歴史において、宇宙の概念がいかに拡大し、変遷したかを追い求めた面白い本である。池内氏は物理学者だが、神の居場所はどこかを宇宙論の歴史を辿り、太陽系から星の宇宙へ、さらに銀河宇宙から…