2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

瀬川拓郎『アイヌ学入門』

瀬川拓郎『アイヌ学入門』 日本国民は、同一民族という考えが強い。やっと「多民族国家」だという歴史観が認められつつある。アイヌ民族が先住民族だという見方は、1997年の「アイヌ新法」により少しずつ根付きつつある。それまでは、1899年の「北海…

S・ガザニガ『<わたし>はどこにあるのか』

S・・ガザニガ『<わたし>はどこにあるのか』 認知神経科学者の脳科学講義である。ガザニカ氏は、脳の右半球と左半球の働きの違いについて多くの発見をしてきた。この本は脳の最先端の研究と脳決定論に対し、自由意志や社会的責任・倫理の在り方にまで立ち…

マクルーハン『メディアはマッサージである』

マクルーハン・フィオーレ『メディアはマッサージである』 1967年刊行だが、新訳が出たので読んだ。ヴィジュアルとテクストが混合し、グラフィックデザイナーのフィオーレと編集者エイジェルが協力したため、60年代には、斬新な書物になっている。マク…

トルストイ『セヴストーボリ』

トルストイ『セヴストーポリ』 ロシアのクリミア併合と、ウクライナとの内戦の報道をニュ−スで知ったとき、私は1853年のクリミア戦争を想起した。トルコ・英仏連合軍とロシア帝国が凄惨な攻防戦を数ヶ月戦った近代帝国戦争が、クリミア戦争だった。トル…

竹内康浩『謎とき「ハックルベリー・フィンの冒険」』

竹内康浩『謎とき「ハックルベリー・フィンの冒険」』 「トムソヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィンの冒険」さらに「王子と乞食」などユーモアな喜劇的な小説を書いたマーク・トウェインが、晩年の「人間とは何か」や「不思議な少年」などを読むと、人間…

清丸恵三郎『北陸資本主義』

清丸恵三郎『北陸資本主義』 古厩忠夫『裏日本』 北陸新幹線開通で沸いている。かつて古厩氏の名著『裏日本』(岩波書店1997年)を読んだが、北陸地方が明治から戦後高度経済成長まで、太平洋ベルト地帯への傾斜投資によって地域格差がいかに作られたか…

イヴォーリン・ウォー『ご遺体』

イヴォーリン・ウォーの小説を読む(3) ウォー『ご遺体』 日本映画で納棺師をあつかった「おくりびと」というのがあった。本木雅弘が好演していた。死者と遺族に敬愛をもって「職人」芸で、清掃・化粧。などを行い、納棺していく。これに反し、ウォーの小…

森村進『法哲学講義』

森村進『法哲学講義』 私達は法に充満した社会に生きている。国会で、次々法律が作られる。最高裁はじめ司法判断は、重要な判決を出す。憲法改正問題もある。裁判員制度で、法廷に出て法解釈に参画する。だが、「法とはなにか」や「正義とはなのか」「道徳と…

森本あんり『反知性主義』

森本あんり『反知性主義』 いま日本でも、反知性主義という言葉がよく使われる。森本氏は、アメリカのキリスト教史における信仰復興運動(リバイバリズム)の歴史を辿りながら、「熱病」としての反知性主義を辿っている。 ピューリタンが建国したアメリカは…

浦田一郎・前田哲男・半田滋『集団的自衛権』

浦田一郎・前田哲男・半田滋『集団的自衛権』 私の学生時代に、60年安保闘争という伝説的な反戦平和運動があった。冷戦期でもあり、戦争に巻き込まれるという不安もあった。安倍首相の祖父・岸信介首相の時、集団的自衛権が初めて出てきた。日米の集団的自…

ピランデッロ『月を見つけたチャウラ』(短編集)

ピランデッロ『月を見つけたチャウラ』(短編集) 私は、ピランデッロの短編小説を読むと、ドイツのホフマンの幻想小説を連想してしまう。人生の不条理を幻想文学として描いていく。ホフマンの方が、幻想が深く深刻だが、ピランデッロは、暖かい共感性をもち…

開沼博『はじめての福島学』

開沼博『はじめての福島学』 開沼氏は、ステレオタイプの「避難」「賠償」「除染」「原発」「放射線」「子供たち」の6点セットではなく、論理とデータを通して、福島の問題のベースを再設定しようと試みている。複雑で一筋縄では溶けない「福島問題」に肉薄…

アントニー・D・スミス「ナショナリズムの生命力』

アントニー・D・スミス『ナショナリズムの生命力』 スミス氏によれば、ネイションが超えられるとか、ナショナリズムが別のものに変わという可能性は現状ではないし、未来にも続くという。グローバリズムも、多国籍資本主義も、ネット社会も、地域連合も、ナ…

武村政春『巨大ウイルスと第4ドメイン』

武村政春『巨大ウイルスと第4のドメイン』 21世紀にはいって、巨大ウイルスの発見が続いている。ミミウイルスに始まり、メガウイルス、パンドラウイルス、2014年にはピトウイルスが見つかった。まだ少数だが、DNAの全体のゲノムで見ても、マイコプ…

山内一也『エボラ出血熱とエマージングウイルス』

山内一也『エボラ出血熱とエマージングウイルス』 20世紀には天然痘が根絶されたのに、21世紀になると、エボラ出血熱やサーズ、高原性鳥インフルエンザなど致死率の高い「エマージングウイルスの時代」になってきている。西アフリカでは、2014年には…

鉄野昌也『大伴家持』

鉄野昌弘『大伴家持』 「春の野に霞たなびきうら悲し この夕影に鴬鳴くも」 「海行ゆかば 水漬く屍 山行かば 草むす屍 大君の 辺にこそ死なめ」 家持は二重性がある。「春の野の」歌のように、孤独な個の憂いを秘めた「近代的」憂愁の歌と、「海行ゆかば」の…