2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

堀米庸三『正統と異端』

堀米庸三『正統と異端』新ローマ法王はフランシスコ一世と決まった。フランシスコが13世紀に清貧の原始キリスト教の使徒的生活を唱え、高位聖職者の世俗的腐敗に満ちていた教会を批判し、当時のローマ教会が容認しなかった新宗教運動の教祖だったことを考…

カニグズバーク『クローディアの秘密』

カニグズバーグ『クローディアの秘密』 朝日新聞によると、4月19日児童文学者のE・Lカニグズバークさんが米バージニア州で亡くなったという。私は彼女の『クローディアの秘密』を嘗て読んだことがあり、本棚から取り出し再読した。前に読んだときはサリ…

佐藤忠男『みんなの寅さん』

佐藤忠男『みんなの寅さん』 葛飾・柴又駅前の「寅さん像」を見るたびに、何故銅像なのか疑問に思う。私は木造造りのほうが寅さんに似合うのにと思うのだが。昭和の国民的人情喜劇映画「男はつらいよ」を佐藤氏は、日本映画史を背景に論じたもので名著である…

菅野稔人編『金融緩和の罠』

萱野稔人編『金融緩和の罠』 日銀がデフレ脱却のために、大胆な金融緩和を打ち出し、国債を大量に購入し、紙幣が多く出回るという政策で、経済成長を目標とするという。G20会議でも「脱デフレと内需拡大」のためで「通貨安競争」のためではないということ…

村井靖彦『出雲と大和』

村井康彦『出雲と大和』 古代史では3世紀の邪馬台国と卑弥呼の存在は、長年にわたり論争されてきた。村井氏は方々の神社を歩き、祭神信仰を調べ、それを記紀、出雲風土記、魏志倭人伝で読み解き、邪馬台国は、出雲族の連合王国として大和に存在し、神武東征…

スーザン・ソンダク『写真論』

スーザン・ソンダク『写真論』 写真論は多くある。私が古典として記憶するのは、ベンヤミン『写真小史』とロラン・バルト『明るい部屋』(いずれもこの読書日記で取り上げた)それにソンダクの『写真論』である。1970年代の本であり、その後のカメラ技術…

中川淳司『WTO』

中川淳司『WTO』 WTOは世界貿易機関のことで、今から18年前の1995年に設立された。世界158国が加盟している。国際自由貿易のための関税切り下げなどの多角的貿易交渉のグローバルな機関だが、2008年のリーマンショック以来、排他的な二国…

プロジェクトシンジケート『世界は考える』

プロジェクトシンジケート『世界は考える』 プロジェクトシンジケートとは、プラハに本拠を置く国際言論組織である。この集には、世界を代表する経済学者、政治家、国際機関代表者らが2012年の世界を考える論考23編が収められている。原題は「いなごの…

『ギリシア悲劇Ⅲ エウリピデス』 続

『ギリシア悲劇 Ⅲ エウリピデス』 続 「ヒッポリュトス」 継母が継子の息子に不倫の恋をして、破滅していく演劇は、日本でも浄瑠璃・歌舞伎にある。この劇もアテナイの王妃パイドラが、先妻の王子ヒッポリュトスに恋をして苦悩する物語である。継母は淫乱で…

木村草太『憲法の創造力』

木村草太『憲法の創造力』 木村氏は憲法改正ではなく、現憲法に立って想像力を働かせて多くの人の納得できる公平なル−ルを創造できるという「創憲論」という立場に立っていると思う。木村氏は、創造的憲法の権利を現実の憲法裁判の判決をもとに考えている。…

『ギリシア悲劇 エウリピデスⅢ』

『ギリシア悲劇Ⅲ エウリピデス』 『メデイア』 この演劇は、蜷川幸雄演出で「王女メデイア」として20世紀末まで何回も上演されギリシアなど海外公演も行われた。メデイアに女形で平幹二朗が扮し、辻村ジュサブロウの衣装で、「情念の操り人形」のように演…

三井秀樹『琳派のデザイン学』

三井秀樹『琳派のデザイン学』 琳派とは江戸時代の画家俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一、鈴木基一らの画風をいう。三井氏は、琳派の美学が、20世紀の近代西欧美術やデザインにまで影響を及ぼし、さらに現代日本のデザインやファッション、ポップアートや、「…

渡辺義浩『「三国志」の政治と思想』

渡辺義浩『「三国志」の政治と思想』 三国志は映画「レッドクリフ」や中国制作のテレビドラマ、さらにゲームなどいまやブームといってよい。古くは吉川英治の小説や横山光輝の漫画でも、おなじみである。だが、三国志演義によった英雄たちの戦闘物語が強調さ…