井村裕夫編『医と人間』

井村裕夫編『医と人間』

     私は、最近肝臓がんの手術を受けた。ぜひ読みたいと思い、購入した。医学界の11人が、「医学の最前線」と「医療の現場から」の二部にわけ、いま日本の医学がかかえている問題を述べている、
    ノーベル賞を受賞した山中伸弥氏が「再生医療創薬」でiPS細胞の移植の再生医療の近未来を、網膜黄班という病気ですでに始まり、心臓疾患やパーキンソン病、糖尿病などで進みつつあり、がんを攻撃する免疫細胞をつくることも考えられているという。
    間野博行東大教授は、「21世紀のがん治療」で、ねらいを定めた「分子標的薬」に対して、肺がんにおける増殖阻害薬を、いかに臨床実験を繰り返し、劇的に治療薬として成功したかを述べている。今後他のがんにもひろがるのだろうか。
    成宮周京都大名誉教授は、遺伝子ゲノムを標的にする創薬について、ゲノム創薬がうまくいかないのは、一つの遺伝子がここの病気どう働くかがわからないためで、ただがんはゲノム変異で起こる病気だから、特定のがんの変異分子を対象に、分子標的薬が湯くれるという。しかし依然として、薬が効く集団と効かない集団の「層別化」はある。
   「医療現場から」では、吉原博幸京大名誉教授は「電子カルテ」の功罪を論じているし、日野原重明聖路加国際大名誉学長は、チーム医療における看護師の新しい役割を述べている。私もがんで入院中の病院で、看護師の地位の重要性を感じた。大嶋健三郎氏の「ホスピス。緩和ケア」や、会田薫子東大准教授の「胃ろう問題と死生学」も、いまの医療現場で、いかに患者の生活の質を維持し「死」と向き合うかが、導入されてきたかが見て取れる。(岩波新書