常田佐久『太陽に何が起きているか』

常田佐久『太陽に何がおきているか』
 常田氏は、国立天文台教授で、2006年打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」の研究センター長である。この本は太陽観測衛星を1981年「ひのとり」打ち上げから、アメリカと協力し1991年「ようこう」、そして「ひので」までX線望遠鏡で太陽活動を観測してきた苦心の記録である。
 日本はいまや太陽観測の先端に立っていることがよくわかる。この観測で太陽の内部構造から、その表面光球の磁場から、、黒点の盛衰、太陽の一番外側の大気圏コロナでの磁力線のエネルギーがどう転換され、太陽風(磁気嵐)やオーロラが生まれるかが次第に明らかになってきているという。太陽表面で巨大なプラズマが噴出し、磁気嵐はオーロラとなり、地球に向かうと1989年カナダの大停電を引き起こし、人工衛星にぶつかればカーナビや携帯電話が故障する。いまや宇宙天気予報が必要な時代なのである。
 常田氏は太陽を強力な「磁気の星」だと指摘している。太陽観測衛星のX線望遠鏡で太陽の棒磁石的磁気が次第に明らかになり、黒点の成立や、コロナ加熱などが溶け始めていると詳細に書いているが、専門的知識がないと難しい。磁気の星としての太陽が複雑な激しい活動をしていることが、地上で見る明るい平面的太陽から想像も出来ないことがわかる。
 この本のもう一つの特徴は、黒点が11年周期で増減するのが、この20年で黒点数の減少が続き、「無黒点日」も多くなっている太陽の異変は、なぜ起こっているのかの分析にある。17世紀にも極小期があったが、その謎を解こうとしている。私が面白かったのは、最近いわれている数十億年前太陽は暗く、そため地球温度は低下し「全地球凍結」した仮説に異をたて(この欄で2011年11月28日取り上げたウォーカー『スノー・ボール・アース』参照)、重く明るかったと常田氏はいい、そのため地球凍結はなかったとしていることだ。それにより生命誕生が可能になったというのである。(文春新書)