三井秀樹『琳派のデザイン学』

三井秀樹琳派のデザイン学』
 琳派とは江戸時代の画家俵屋宗達尾形光琳酒井抱一、鈴木基一らの画風をいう。三井氏は、琳派の美学が、20世紀の近代西欧美術やデザインにまで影響を及ぼし、さらに現代日本のデザインやファッション、ポップアートや、「クールジャパン」の美学まで貫徹しているというのだ。三井氏はマンガ、アニメなど「カワイイ文化」の根底にまで、琳派の美意識の「粋」があるとまで言い切る。日本の文化芸術立国のソフトパワーの源流とまで主張している。
 では琳派の美学とはなにか。三井氏は西欧美術が遠近法や黄金比など平面を写実する合理的美学による「純粋美術」を志向しのに反し、琳派は屏風、襖絵のどインテリアから扇絵から陶芸、蒔絵、着物小袖まで「生活美術」だったという。用と美が兼ねられていた。そこには茶室や華道まで総合美術でもあった。西欧が「写実主義」の追求だとすれば、日本は四季をもとに花鳥風月を基盤とした装飾を追求した「自然主義」だとみる。その上で琳派の造形美学を ①非対象の構図である ②平面的な描写である ③斜線の配置 ④表現における抽象性の刷り込み ⑤写実を超え、余白や部分の切り抜きなど自由な発想 ⑥形のデフォルメや省略 ⑦コラージュやコラボレーションの作品化⑦異素材の組み合わせや金銀などメタリックの色材を挙げている。
 確かに琳派の美学は、印象派はじめ現代絵画に大きな影響を与えたことはたしかである、私も光琳宗達はじめ広重、北斎の美術は好きだが、三井氏のように、あまりにも琳派で現代デザインや現代アートを裁断していくのは面白い、抵抗感もある。デザインで亀倉雄策田中一光杉浦康平、浅羽克己らや、現代アート草間弥生村上隆らに、どう琳派の影響があるのかの説明がもう少し欲しかった。(NHK出版)