「中央公論」12月号『壊死する地方都市』

中央公論」12月号『壊死する地方都市』

  衝撃的な特集である。増田寛也氏と人口減少問題研究会の「2040年、地方消滅。『極点社会』が到来する」を読むと、地方が消滅する時代が来るというのだ。人口減少の大波が先ず地方の小規模自治体を襲い、その後地方全体に広がり、次第に都市部も飲み込み、30年後には人口の「再生産率」が急激に減り、消滅する地域が続出するというのだ。綿密な人口動態調査に基づき、人口減少は地域により進行度が異なり、大都市への若者流入、や「若年女性」の減少スピードが、大都市圏に人口が吸い寄せられる「人口ブラックホール現象」を産み、消滅地方都市との「極点社会」の到来をデータで裏付けた。
  高齢者もいなくなり、行き詰る地方に対し、大都市圏では出生率は低下を続ける。藻谷浩介氏と増田氏の対談「やがて東京も収縮し、日本は破綻する」という対談で、もはや「撤退戦」をやるしかないという。山間部も含めたすべての地域で人口減抑制のエネルギーをつぎ込むのではなく、30万人ほどの地方中核都市に資源を投入し、そこを最後の砦として再生を図るというのだ。そこで東京に出ていく必要のない若者を中心に「定住自立圏」を作り出そうという。
  小峰隆夫氏は、アベノミックス「高度強靭化」の「公共投資回帰では何も解決しない」で、「国主導」「分散志向」「後進地域中心へ」「国土均衡ある発展」に逆戻りしていて、人口減少社会の対策に成らないと批判している。北村亘氏は、「政令指定都市の処遇にあえて差をつけよ」で、大阪市名古屋市、福岡市、札幌市の4都市に財源独立の市域内の税収の取り分引き上げを行うべきとしている。財政独立性が強化されないと大都市の行政は破綻していく。村上誠一郎氏は、道州制よりも、30万中核地方都市を多く作り、国と直接対話する時代が来たと提案している。この特集は、来るべき、いやもう始まっている人口減少社会のビジョンに踏み込もうとしていて、考えさせられる。(中央公論新社)