北村亘『政令指定都市』

北村亘『政令指定都市


  2013年10月に政令指定都市川崎市長選で、自公民相乗りの官僚候補を市民派の福田紀彦氏が破り当選した。その前にやはり政令指定都市堺市で「大阪都構想」に反対する市長が維新の会の候補を破っている。私が住む横浜市では民間人の林文子市長が再選されている。神奈川県は横浜市川崎市相模原市の3指定都市を持ち、その県からの独立性は次第に強まっている。北村氏の本は、政令指定都市という大都市の抱える問題を抉り出し、いま政治問題になっている「大阪都構想」で日本の大都市は、甦るのかを考えている。
 平成の市町村大合併とともに「人口50万人以上」という要件しかない政令指定都市は急増し、いまや20都市もある。指定都市に住む人口は2635万人、日本人の5人に1人が大都市に集中している。昼間に通勤する人口を加えればもっと増える。だが日本では大都市の担う役割に沿って設計された統治制度があったとは言えないと、北村氏は指摘している。戦後に指定都市が出来たのは、府県と旧5大都市(大阪、横浜、名古屋、京都、神戸)の妥協の産物であり、指定都市に8割ほどの府県の権限を委譲し独立自治を認めたものだった。経済成長期までは、中央政府の財政調整制度で、指定都市経済成果は農山漁村に再配分され、均衡のとれた国土の発展が可能だった。
  だが90年代以降、過剰人口の大都市流入や、都市での少子高齢化の「限界集落」の存在、生活保護や待機児童など福祉・教育の歳出増、公共施設の老朽化など大都市問題が累積してきている。府県と指定都市の「二重行政」も残り、大都市と周辺残存地域の矛盾も強まっている。その解決の制度変革として、大阪都構想中京都構想、新潟州構想が打ち出されてきている。
 北村氏によると「大阪都構想」は橋下徹大阪市長以前の10数年前から構想されていたという。二転三転しているが、2012年の「大都市地域特別区設置法」成立で具体化に入りつつある。税制を含め大都市の「自治都市」化はますます必要に成ってきているのは確かだ。
 税収など財政の国家からの移譲、府県制の縮小、指定都市の自治都市州と、そのなかの特別区の多数化による住民サービスの濃密化など「集権と分権」に関しまだまだ解決すべき問題は多い。北村氏の本はそのためにも読んでおきたい本である。(中公新書