山崎亮『コミュニティデザインの時代』

山崎亮『コミュニティデザインの時代』

 孤立死無縁社会といわれ、つながりが分断された社会になりつつあるという。人口減少社会や高齢化社会により中山間離島地域では、限界集落も問題になってきている。「つながり」を作り出す社会が、新しい公共として求められている。これまで地方都市はじめハードな公共施設を造るデザインが重要視されてきたが、いまやつながりを求めるソフト造りが求められ、そのデザインをする「コミュニティデザイン」が重視されてきている。山崎氏は全国で50以上のコミュニティ造りにたずさわる「デザインしないデザイン」を住民参加で行ってきた人で、この本もそうした活動を描いている。
地域でのみんなでの町づくりが多く描かれている。兵庫県・有馬富士公園、鹿児島市・マルヤガーテンズ、宮崎県・延岡駅周辺、姫路市・いえしまプロジェクト、島根県海士町プロジェクトなどそれぞれ多様だが、住民が次第に生き生きと楽しみながら、町づくりをおこない、コミュニティが作り出されていく過程は、読んでいて面白い。
建物や施設でなく、そこで暮らす人々のつながりを、住民自身がワークショップをたちあげ、山崎氏らが、それを円滑に支援しながらコミュニティをデザインしていくことは、人口減少・高齢化社会において、ハード整備偏重時代の終焉を示している。いまやデザイナーは豊かな生活を実現するために、物をデザインするのではなく、つながりや活動性をデザインしていくというのに驚く。
中山間離島地域に山崎氏は注目している。自動車社会でインターネットも普及しているが、地縁的つながりがまだ残り、人口減少・高齢化の先進地だから、Iターン組も含み今後の日本の先進地でもある。宅配便や個人商店や民間企業の公共的役割も強まってくる。山崎氏のかかわったいえしまや海士町のプロジエクトは魅力的である。コミュニティデザインの手法も十分に書かれており、その運動でいかに住民が変わっていったかもわかる。行政職員にも熱く関わる人が出てきているのも注目される。(中公新書