鎌田浩毅『地学のツボ』

鎌田浩毅『地学のツボ』

東日本大震災後、地球科学である地学を学びたくなった。鎌田氏によれば地学は20世紀になりコペルニクス的転換にあり、最先端の科学である。だが日本の高校生の地学履修率は7%であり、地震・火山・気象など日常の自然災害の列島に住む我々には、最低限のリテラシーが必要なのに学ばれていないという。この本は大震災前のものだが、地球科学と其れに関連した地球惑星科学の最先端を紹介したもので、いま地学を学ぶための教科書として良い本である。
この本では地震はいかに起こるか、火山噴火の予知とともに、東海・東南海・南海の巨大地震の三連動や富士山噴火の可能性から書き始められている。この本でおもしろかったのは、地面は動くという地学におけるコペルニクス的転換を述べた章である。1960年代以後の地球表面はプレートという厚い岩板で覆われ、それが移動し地震や火山爆発を起こし、ヒマラヤ山脈を押して造る大陸移動(プレート・テクトヒクス説)が述べられ、さらにプレートの底にある地球内部のマントルが、冷たい巨大な低温下降流が核に達し、その反作用で巨大な高温上昇流が登ってくる循環・対流運動が火山・地震を起こすという「ブルーム・テクトニクス」まで言及されている。動的な地球運動がホットスポットで火山噴火になる。
地球の歴史の章も面白い。地球変動による生物の大絶滅と進化や、大気と海洋の大循環も最先端の研究成果をもとにやさしく書かれている。異常気象を起こすエルニーニョ現象の原因も未だわかっていないというから、地学はまだこれからの学問なのである。(筑摩書房