飯田哲也『エネルギー進化論』

飯田哲也『エネルギー進化論』 



福島原発事故以後、脱原発のエネルギーシフトの方向が強まっている。飯田氏はエネルギー転換の唱道者であり、実践者でもあり、原発から自然エネルギー転換の活動家であるが、それだけでなく、大規模集中から小規模分散へ、中央集権から地域分権へ、独占からオープンへと文明転換(飯田氏によれば「第4の革命」)を行おうとする。いま読んで日本の未来を考えるためには重要な本である。其れと共に世界では転換に動いているのに、何故日本では自然エネルギーが普及しないのか、2000年代の「失われた10年」の分析も鋭い。いま日本の独占企業(全国10地域の電力幕藩体制)と官僚体制、揺らぐ政治をも浮き彫りにしていて読み応えがある。

飯田氏は先ず自然エネルギー懐疑派のコストが高いや不安定、環境破壊もあるなどに反論していく。フクシマ以後のエネルギーとしてアメリカでの積極的取入れ、世界で成長を続ける風力発電太陽光発電を実証的に示す。さらに1970年代からの自然エネルギーを4つの波の歴史にわけて辿り、ヨーロッパの環境エネルギー革命を北欧やドイツの先進性を辿る。地域からの小規模分散型の取り組みが、国の自然エネルギーの「固定価格買取精度」に結実していく過程を丁寧に描く。2000年代の「太陽による平和」として国際再生エネルギー機関の設立の道のりを示す。
読み応えがあるのは何故日本が自然エネルギー後進国に転落していったかの分析であり、政治決定する官庁(経産省)や電力幕藩体制の「阻止」が描かれている。飯田氏はまずは送電線を高速道路と同じ「公共財」とし、自然エネルギーを優先して接続する必要を主張している。さらに地域分権から始まったエネルギー転換として、東京都や北海道グリーンファンド、飯田市の市民発電所祝島自然エネルギー100%プロジェクトを取り上げている。飯田氏のエネルギーシフトは10年で原発を停止し、2050年には石炭・石油・天然ガスもゼロにすることが、自然エネルギーと省エネ・節電社会で達成できるという構想である。それは夢ではないことがこの本を読んでいると思えてくる。(ちくま新書