河原一久『スター・ウォーズ論』

河原一久『スター・ウォーズ論』

娯楽映画は、最近シリーズ化する。寅さん映画のようだ。だが007も、ハリーポッターも、スター・ウォーズも面白くて人気がある。1977年に始まったスター・ウォーズはエピソードとい形で、神話的起源・系譜まで発展している。2012年にルーカスフィルムは、ディズニーに買収されたが、今後もこのシリーズは続く。
 河原氏は、「なぜ面白のか」と30年間も、この映画について考え続けてきたという。アメリカ映画史のなかで考えている。特殊視覚効果という映像技術の効果も勿論在るだろう、西部劇、史劇、戦争映画の後に、SF宇宙活劇が出てきた必然性を、河原氏は述べている。だが最初は映画会社から「ボツ」にされた企画だったという。
 ジョージ。ルーカスは青年期に日本映画との出会いで、黒澤明監督の『七人の侍』などに大きな影響を受けたという。そこには、黒澤的な「アウトサイダーの物語」が取り入れられていく。ルーカスも反抗者の時代を若者期に過ごした。河原氏が重視しているのは、黒澤から引きついた「共生」という考えだという。「全肯定し共生する」超人思想があるという。
 確かに「多国籍映画」だ。多種族の銀河共和国が、分離主義の独立惑星連合により危機を迎えるが敗退する。その結果帝国の時代にヒューマノイドが支配し、エイリアン種は迫害される。その状況に反抗する反乱同盟が勝利していく物語だろう。
     「共生」の復活がテーマであり、フォースの源のミディ・クローリアンは、あらゆる生物に共生しているし、ジェダイ騎士団が探究したことだと河原はいう。
 アナキン・スカイウォーカーの善から悪への転落と、息子ルークとの共生がアナキンの「改心の可能性」に通ずるともいうのだ。ライトサイドとダークサイドのフォース双方を肯定する。単なる「正義の戦争物語」でもないし、勧善懲悪の映画ではないのだ。
      ディズニー映画になるスター・ウォーズは、どう変化していくのだろうか。老化や女性と活躍という「人間性」が、宇宙や人工知能化した機械力よりも強まってくるかもしれない。(NHK出版新書)