砂原庸介『民主主義の条件』

砂原庸介『民主主義の条件』

衆院議長の諮問機関「衆議院選挙制度に関する調査会」は、1月14日に小選挙区6人、比例区4人の定数削減を答申した。一票格差の最高裁判決「違憲状態」を受けたものである。18歳選挙権とともに、今後の選挙制度は大きな転換期に来ている。
サントリー学芸賞受賞した砂原大阪大準教授の新著は、選挙制度全般を広い視野で論じていて、いまの日本の選挙を考え、どう変革するかを見る「教科書」としても優れている。
日本の選挙制度が様々な妥協による折衷なために、民主主義の基礎の政党が不安定になっていると砂原氏はいう。つまり小選挙区制のような多数制の選挙は、多数派を生み出さず、比例制は、少数派を生かすほどに政党をまとめない中途半端なのだ。
砂原氏にいわせれば、早急に変える必要があるのは、参議院と地方議会の選挙だという。両方とも定数不均衡が放置され、いびつになっている。参議院小選挙区制(1人制)、中選挙制(複数制)、非拘束名簿式比例代表制が混在している。地方議会では、小選挙制と中選挙制が混在する都道府県議会、区割りをおこなわない中選挙制と同じ複数当選・単記非移譲式投票の市町村議会が存在する。
多数制を中心に参議院をするなら、都道府県から1人代表を出す地方代表の色合いの議会になるがというと、なかなか難しい。地方議会でも比例制を強めるのは、個人名に投票する非拘束名簿式ならば、スムーズに移行すると砂原氏は見る。市町村では1人区の区割りは簡単ではなく、定数を一桁に減らし、有権者に少数の議員を選ぶ連記式にすることも考えられる。中選挙制からの決別が必要だ。
政党は複数の政治家の集まりではなく、有権者の意思を反映した組織として、情報公開という透明性、意思決定の外部からの検証ができる「政党法」をつくるべきである。まず地方議会の改革が必要で、そのためには行政から独立しおた選挙管理機関と、政治家から離れた第三者機関による選挙制度改革が必要という、
砂原氏は、多数制と比例制の混合の今の選挙制度は「混ぜるのはキケン」といっている。正解はないとしても、一票の格差だけでなく、おおもとの民主主義の条件をいかに作り出すかが、有権者・国民に大きな課題としてのし掛かっていると、この本を読み認識した。(東洋経済新報社