荻上チキ『ディズニープリンセスと幸せの法則』

荻上チキ『ディズニープリンセスと幸せの法則』

      2014年公開されたディズニーアニメ「アナと雪の女王」は、日本でも254億円を超える大ヒットになった。「Let It Go」は、皆で歌っていた。
      荻上氏は、ディズニープリンセスたちの物語の系譜を追いながら、構造分析をし、いかに変化し、自己否定していったかを、読み解いている。
      荻上氏は3つの「幸せの法則」を見る。第1の法則は、1930−50年代の「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」である。プリンセスは美しく、従順で働き者で、王子様とであったら恋に落ち、不幸な境遇から救ってくれる。動物や異形のものにやさしいのは善で、悪役は嫉妬深い。
      第2の法則は、89年から92年の「リトル・マーメイド」「美女と野獣」「アラジン」である。プリンセスは冒険し、自分で夢をつかみ、身分違いやハンディキャップを乗り越える恋をする。不幸な境遇を変えるチャンスは、異性が与え、悪役は権力欲が強い。
      私が面白かったのは、荻上氏が3Dアニメ「シュレック」「「トイ・ストーリー」を、第1の法則の自己否定とパロディとして、「アナ雪」が出てくる道の下準備をしたことの分析だった。美男美女の恋愛の否定、王子やヒーローの欠点、悪役の言い分、男が救う側で女が救われる側の転倒。
      第3の法則は、21世紀になり「魔法にかけられて」「プリンセスと魔法のキス」「メリダとおそろしの森」「塔の上のラプンツェル」をとおり「アナ雪」になる。プリンセスは恋より自由を望み、不幸な境遇を変えるのは、同性を含む他者との対話となる。ありのままの自分を愛し、偏見を乗り越える。悪役にも心があり、共存できる新しい秩序を求める。(「マレフィセント」「リロ・アンド・ステッチ」に、萩上氏はポスト「アナ雪」を見ている)
      この本を読んでいて、私は歌いたくなった。「ありのままの 姿見せるのよ ありのままの 自分になるの 何も怖くない 風よ吹け 少しも寒くないわ」(星海社新書)