ファクラー『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』

ファクラー『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』

ファクラー氏は、日本で20年近くジャーナリズムの仕事をし、ニューヨーク・タイムズの元東京支局長だった。安倍政権の記者会見が、いかに事前に質問事項を提出するかに驚く。オバマ大統領の会見、自由に質疑が行われているからだ。
ファクラー氏は大手メディア始め、安倍政権のメディアコントロールにひれ伏しているのは、言論の自由の危機と見ている。具体的に2014年に自民党が公平中立の報道への圧力をテレビ局にかけ、アメリカなら報道の自由侵害になる。
さらに朝テレ「報道ステーション」に放送法を盾に、古賀茂明氏降板に追い込む。夜食を安倍首相と大手メディア幹部が繰り返すなどアメリカでは考えられないという。
ファクラー氏がメディアの自壊としているのは、朝日新聞が入手した「非公開」の福島第一原発の「吉田調書」に欠陥があったと攻撃したことだ。ファクラー氏が驚くのは。いい機会と読売や産経など同業者が足を引っ張ったことだ。「タコ壺型ジャーナリズム」。
メディアの自由がうしなわれれば自己にかえってくる。アメリカではジャーナリズムが団結連帯し抵抗する。従軍慰安婦報道もそうだ。お互いに足を引っ張る。政権の思うつぼだ。
慰安婦問題が海外で国益を傷つけたというのは、あり得ないとファウラー氏は見る。記者個人に「反日記者」「ねつ造記者」のレッテルをはり、記者個人や家族まで攻撃するネット右翼は、マッカーシズムヒットラーのやりかただ。
2006年朝日が、調査報道にのりだし「特別報道部」を作り、原発村の弊害を「プロメテウスの罠」で報道したことに危機感をもった政権が、それを潰すために「慰安婦報道」をとりあげたとしか思えない。
アメリカの調査報道は、ニクソンウォーターゲート事件以来伝統がある。いまや、デジタル時代になり、ウィキリークスやスノーデン事件にまで発展している。アメリカの監視国家化は、記者個人への盗聴など監視を強化している。
ファクラー氏は、それは日本の未来だという。だが、果たして日本メディアは権力と戦えるだろうか。私は、読者市民の支持が報道の自由に必要になり、大きな闘争が監視国家に対して起こるときが来ると思う。(双葉社