水野和夫・萱野稔人『超マクロ展望 世界経済の展望』

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水野和夫・萱野稔人『超マクロ展望 世界経済の真実』

この本は経済学者と政治哲学者の対談であるが、世界経済を経済学だけでなく政治、思想、社会学という広い領域から、それも世界歴史の文脈からの視点も含め論じていて興味深い。その上で金融危機以後の日本経済・政治の展望まで示している。
第一に世界史の見方が明解である。500年に及ぶ近代資本主義の成立といまやそれが急速に衰退し失効していくという水野氏の歴史分析は鋭い。利潤率低下に着目し資本主義興亡を描く史観は面白い。また1974年から、実物経済からその資源(石油)価格高騰やドル変動相場制などで金融経済に世界が方向転換し、石油まで金融商品化しその肥大化が危機を招いたという世界経済分析も納得できる。
第二に資本主義を国家の覇権主義と結びつけて考える。萱野氏によると資本主義は市場経済とイコールではないとし、岩井克人柄谷行人の異なる価値の差異の市場交換による資本主義発生を批判している。非市場的な国家の税徴収にまで視野にいれ、軍事力や国家の経済介入という経済と政治を一体化して捉えている。アメリカの金融帝国化や「強いドル」政策が、国際資本の完全移動性をもたらし、各国にバブル化とその破綻をおこさせたとも分析している。
私が面白かったのは、世界資本主義が経済成長から、低成長時代にはいり、デフレと財政赤字が増大するなか、今後は欲望による内需拡大よりも、国家。社会の「規制」による付加価値の創出(例えば環境規制や金融取引の課税するトービン税など)を水野氏も萱野氏も豊かさの実現と見ていることである。自由主義でなく規制による市場の豊かさである。(集英社新書