大場祐一『恐竜はホタルを見たか』

大場祐一『恐竜はホタルを見たか』

発光生物といえばホタルだろう。この表題を約1億年前の白亜紀に恐竜と原初哺乳類がホタルの光をみていたと、発光生物学の大場氏はいう。ホタルは原初哺乳類の好物だが、苦味の不味物質と毒物質をもち、光ることで警告して生き延びてきた。
大場氏によると、ムカデやカタツムリなど多数の発光動物が地球に存在し、特に水深200m以上の深海に多い。隠れる場所のない浮遊生物は海面からの太陽光で、自分の影が映し出され。捕食者に狙われやすい。腹側を青色に光らせ、シルエットを隠す「カウンターイルミネーション」で生き残る。
ノーベル賞受賞の下村脩博士はクラデの発光に、「発光タンパク質」を見っけた。意外に発光の仕組みはわからない部分が多い。大場氏の独創は、「自力発光」と「共生発光」があるといい、他生物から発光原料のルシフェリンをもらい、発光する「半自力発光」を重視していることだ。
オキアミが発光性の渦鞭毛藻をもらい、ウミボタル類からモライ、コペポーダから食べられて「セレンテラジン」を貰う。発光バクテリアは様々な魚と共生関係を結び、発光能力を与えたと大場氏はいう。
発光バクテリと発光コペバークの進化が、発光二大発明だという。進化史上の要因がある。何故光るのか。ホタルのように雄雌の求婚や、敵の威嚇、餌を引き付けるなどさまざまであろう。暗闇の地球に誰が始めて光をつけたかを、進化論や遺伝子分析で解明していく面白い本である。(岩波科学ライブラリー)