田中宏幸ら『歴史の謎は「ミュオグラフィ」で解ける』

田中宏幸・大城道則『歴史の謎は「ミュオグラフィ」で解ける』
       考古学に最新先端技術を使い、古代遺跡をみつけたり、南米・ナスカの地上絵の全貌(山形大学など)を見つけ出したりする。
       水中考古学では、水中音波探知機や金属探知機、さらにロボットを使う自律型水中ロボット(東京海洋大学)が緯度経度の座標入力で、一定範囲を探索できる。トルコ沖で40世紀前の最古の沈船ウル・ブルン号、撃沈された戦艦武蔵の発見、1890年熊野灘で沈没したトルコ木造軍艦エルトゥールル号元寇で沈んだモンゴル帝国の船も見つかっている。
       この本では、非破壊で巨大な物体を透視する素粒子ミュオンを使った「ミュオグラフィ」の透視画像がいかに考古学の解明に役立つかを述べている。X線レントゲンは、巨大な物体には仕えない。ミュオグラフィは、2006年田中氏が、世界で初めて浅間山という火山の透視画像に成功してから注目された。
       ミュオグラフィ技術は、いまや資源探査、炭素貯留層監視、原発プラント検査などに使われてきている。この技術をエジプトのピラミットの探査などの、古代遺跡探査にも応用されようとしている。
       クフ王ピラミドの石材の組み方など内部構造の透視で、その建造方法が分かりつつあるという。またカフラー王のピラミットの内部の未発見の玄室の透視もおこなっている、さらにツタンカーメン王以降の「王家の谷」の全貌を発見しようとしている。
       アメンホテップ一世や、その母のネフェルトイリ、トトメス二世の王墓も発見されていない。巨大な建造物を非破壊で透視するミュオグラフィ技術が威力を発揮するかもしれない。
       大城氏は、秦の始皇帝陵の全貌や、カッパドキアの未発見の地下住居、ラスコーやアルタミラのような洞窟遺跡の存在さえ、この技術で可能になると述べている。(PHP新書)