マアンクーゾ『植物は知性をもっている』

マンクーゾ+ヴィオラ『植物は<知性>をもっている』

       イタリア・フィレンツェ大学教授で植物学者マンクーゾ氏の研究による、植物は「知性」をもつという面白い本である。地球の多細胞生物の99・7%は植物で、人間・動物は0・3%にすぎず、地球は植物支配の「緑の星」である。植物は太陽エネルギーを葉緑体で化合し、動物の生命に媒介している。
       だが植物は「動かない」とか「感覚がない」「脳がない」とされてきた。マンクーゾ氏は、多くの観察・実験で、植物は予測し、選択し、学習し、記憶し、問題解決知性をもつ生物だという。植物は脳、胃、肝臓、腸などもたない「器官なき身体」だが、沢山の構成部品が機能的にまとまった、各部分が交換可能な「モジュール構造」で、分散可能なネッワーク構造をとる。
       面白いのは動物のゾウリムシと植物のミドリムシを比較し、ミドリムシは光受容体という「目」をもち、植物は「定住民」の進化を選んだが、実は「植物の運動力」(チャールズ・ダーウィンの著書)を持つという。それは、「根」であり「根端」はデータ処理センターの「脳」であり、酸素、ミネラル、水、窒素を求め動き、さらに重力、磁力さえ識別でき、感覚器官であるとともに、電気信号をだしコミュニケーションさえ行っている。
       植物は感覚を脳に集中するのでなく、葉、枝、根と分散型の物理型ネッワークを形成し、根は電磁場さえ感知する。トウモロコシの根は数十万の根端を持つ。さらに植物は集団的コロニーによる「集団知性」さえもっている。群れとしての「創発知性」もいま研究されている。マンクーゾ氏は、人間型ロボットや動物型ロボットに次いで、「プラントイト」という植物型ロボットで、植物を生態学的な制御版とし、インターネットを通じ、根と葉からたえずモニターされる変数を入手する「グリーンターネット」も発展するという。
        有毒な雲の到来や、空気や土壌の質の情報や、さらに雪崩や地震の予知さえできるかもしれない。私はマングーゾ氏が植物には人間以上の20の感覚をもつというのが興味深かった。光受容感覚(屈光性)、トマトが草食昆虫にお触れたとき仲間に揮発性化合物で警報をだし、それを知覚する嗅覚、ハエトリグサの味覚、オジキソウの触覚、ブドウの音楽を聴く聴覚、さらに未知のコミュニケーション能力まで研究がすすんでいることなど驚く。(NHK出版、久保耕司訳)