ストーン『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』(2)

ストーン&カズニック『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』(2)

   2巻では、冷戦開始、アイゼンハワーケネディ、ジョンソン、ニクソン大統領の時代が描かれる。ストーン氏の史観の面白さは、「覇権帝国」アメリカが、いかに最強の軍事力と核兵器威喝によって、ソ連を封じこめて全世界でアメリカ資本主義の利益を確保し、反共主義を貫いていくかを、生き生きと分析していることにある。
   軍事的緊張の連続であり、朝鮮戦争キューバ危機、ベトナム戦争と、20世紀後半にかけ核戦争寸前が何度も起きている。政権転覆や軍事介入、テロ的暗殺なども引き起こす。南米やアジアにおける国内ではマッカシー上院議員による「アカ狩り」(同性愛者狩りでもあった)や、ベトナム反戦運動弾圧など抑圧と抵抗運動は、「内乱寸前」の状態を作り出した。
   ストーン氏は、「冷戦」をトルーマン・ドクトリンによりアメリカが作り出したという見方を採る。反共主義アメリカ資本主義の使命になり、ジョージ・ケナンソ連「封じ込め」になり、ベルリン危機になる。朝鮮戦争マッカーサー司令官のハルゲマドン的核兵器使用は防止されたが、それはベトナム戦争まで、何回も繰り返される。
   軍人大統領アイゼンハワー時代に「軍産複合体」が好況をもたらし、軍事帝国化していく。水爆実験と原子力の「平和利用」の両面性もストーンは指摘している。ケネディ時代はキューバ危機という強硬路線が核戦争の寸前にまでいたる。フルシチョフの妥協以後のケネディは、緊張緩和と核軍縮の平和共存に転換しようとして暗殺される。
ストーン氏はケネディが生存していたら、ベトナム戦争もなく、平和共存。核軍縮に向かったという。暗殺には軍、諜報機関キューバ侵攻派などのタカ派が背後にいる可能性も示唆している。
   後継者ジョンソンは、トルーマンと同じ凡人の悲劇を、ベトナム戦争で引き起こす。
次のニクソンキッシンジャーの章では。両人は「狂人」と「サイコパス」と名付けられている。ベトナム戦争アメリカの「侵略戦争」という。ニクソンのウオターゲート事件も、反戦運動への盗聴やスパイ活動の延長線上にある。
   非人道的な大量虐殺は、ナチスユダヤ人虐殺に匹敵される。中立国カンボジアのナパーム弾空襲は、かつての日本焼夷弾空襲と同じく、多くの民間人を殺し、その虚無の中でポルポト政権の何百万人の虐殺がおこる。ラオスにも275万トンの爆弾が落ちる。日米安保条約、日本の再軍備強化、沖縄返還の軍事基地化、「非核三原則」のナンセンスも、この文脈でストーン氏は書いている。(ハヤカワノンフィクション文庫、熊谷玲美ら訳)