佐野貴司『超巨大火山』

佐野貴司『超巨大火山』

    地球は、一つの超大陸パンゲアが分裂し移動していまの大陸群に分かれたという大陸移動説は、20世紀の「地動説」である。始めに唱えたドイツの地球科学者ヴェーゲナーの『大陸と海洋の起源』(1929年刊、岩波文庫)は、現代の古典である。佐野氏は、超巨大火山が、マントルの循環により大地を引き裂き大陸を移動させたという。
    この本が面白いのは、海底の世界一の火山を、国際的科学掘削船でドリル付きのパイプで掘り、厚いマグマの溶岩流を採取するなど、世界の超巨大火山でできた地層を調査することにある。日本から1500km東のシャーツキー海台が調べられる。高さ30kmもある巨大な火山島だったという。
    こうした超巨大火山の遺跡は、「大規模火成区」(LIP)と名付けられ、地球上に211もあるという。白亜紀に活発に噴火した。佐野氏は、インドのデカン高原洪水玄武岩デカントラップも調査し、さらに赤道直下に存在するオントンジャワ海台という地球最大の火山集合体も調査している。
    地層の層序や、地球内部のマグマの生成場や、マントル対流で移動しているプレートや、マグマの溜り場などが、少しずつ解明されていく。ハワイ諸島ホットスポットの調査もなされている。大陸移動説は岩石磁気データで明らかになってきたが、佐野氏は大陸を分裂させた原動力を、超巨大火山の噴火によると説明していて重要な指摘だと思う。日本の一部も巨大海台だったという説には驚く。
    大陸が一つになる超大陸形成と、その分裂移動が、地球史上で何回も繰り返されてきたというのにも驚く。
    地球の内部はまだ十分にわかっていない。人類が掘った地下も、表面にすぎない。
深さ5100kmの内核外核、その上のマントル、その上に載るプレート移動、そして海洋や大陸地殻という構造はわかってはいる。だが、マントル対流によるホットスポット中央海嶺、沈み込み帯など十分にはわからない。勿論マグマ溜りによるマグマ生成や火山噴火、さらに地震などには、まだまだ人間は無知だと、この本を読み思った。(講談ブルーバックス