宇野常寛『文化時評アーカイブス』

宇野常寛プロデュ−ス『文化時評アーカイブス』


  2014年のサブカルチャーの文化地図を、宇野氏が中心になって論じたもので興味深い。アイドルがカルチャーの中心になった2010年代というアイドル論と、ニコニコ動画だけでなく、「ゲーム実況」の人気を論じているのが、面白かった。
  「サブカルチャーの歴史化を問い直す」の鼎談で、吉田尚記氏はアイドルをふくめた総てのコンテンツが宗教だと述べ、「ラブライブ!」は自宅でやる「お勤め」といい、新しい法典がでるように新しいシングル、アルバムがでて、法会の時のライブ映像をもう一回みると語る。宇野氏も、体験型コンテンツに20,30代の社会人も金を払う時代で、サブカル自体アイドル化しているという。
   宇野氏は三国時代にたとえ、①ビジュアル系の広義アイドル、②アニソンやボーカロイド、③旧来の音楽産業に分けている。私もアニソンは好きで、毎週土曜日のNHKFMの中川翔子さんの番組をかかさず聴く。
     「アイドル一強時代のクリティカル・ポイント」という座談会も面白かった。48系、乃木坂、ももクロハロプロ、いまやほとんどのコンテンツにアイドルが影響力を持つ時代だ。
  宇野氏は、強い物語がなく、キャラクターたちとそれを補強する関係性を描く「空気系」から、直接キャラに関与出来る「現場系」に移行したと指摘している。48系の今後も論じられ、握手とチェキを超える現場はあるかが論じられている。体験消費論から、スポーツのアイドル化が、次のサブカルになるというのも興味深い。すでに浅田真央さんという、スポーツと両義性をもつアイドルが存在する。
  「実況ゲーム」人気は、「なぜゲーム実況は人気ジャンルになったのか」で、青山雄一氏、石岡良治氏、稲葉ほたて氏、井上明人氏が語り合っている。ゲームもとうとう実況者が登場し「実況者は一人ひとりがメディアと思って参加」(青山氏)し、喋りの芸になっていることに興味を持った。
      Googleの位置情報ゲーム「イングレス」論や、「妖怪ウォッチ」論も面白い。(朝日新聞出版×PLANETS)