國井修『三大感染症の克服をめざす』

國井修『三大感染症の克服をめざす』(「医学界新聞」)
『WHOとは何者か』(「朝日新聞「GLOBE」)
     2014年には、西アフリカで拡大し先進国にも感染者を出したエボラ出血熱が隆盛を極めた。12月には死者7000人を超える。インフルエンザも流行期にはいった。グローバルな感染症との闘いは重要になってきている。この二つの特集は、現代の危機を指摘していて、人類は戦争をするよりも地球規模で、感染症安全保障にもっと力をいれるべきだと主張している。
     國井氏は、アフリカ、アジアなど140国以上で援助をおこなう国際機関「世界エイズ結核マラリア対策基金」(グローバルファンド)で戦略局長を務めている。エイズ結核マラリアの三大感染症は、1日に約1万人、年間300万人の死者を出している。感染症が一国の労働力を減少させ、存亡にも関わってくる。国よっては、社会的差別も生じている。
     國井氏は、現場にいると、予防・治療が可能なのに、救い切れなかったいのちが多いという。東南アジアではでは、エイズは首都や地方都市などに「ホットスポット」があるという疫学データが示された。先進国やビル・ゲイツ財団の寄付で運営されている、資金が豊富とは言えない。いま従来の薬剤が効かない結核マラリアの感染が増えつつあるのが脅威だと述べている。
     國井氏は、いまやシュバイツァー的医者よりも、現地の医師。看護師の育成、検査・医療情報システムの構築が重要と指摘している。
朝日新聞・GLOBE」12月7日の特集「WHOとは何者か」はタイムリーな企画だった。エボラ出血熱では、「国境なき医師団」などから対応が遅いと批判されたが、資金不足と使途制約があり、ここ数年1割の職員がリストラされている。先進国などの拠出金はすくなく、寄付金が8割というのは活動が制約される。
     「国境で感染拡大を防ぐ」から「発生現場で封じ込める」に転換したが、国際的協力による権限強化は、まだまだと「GLOBE」は指摘している。WHOを中核としてNGOの連合などで、主権国家を超えた「疾病対策国際共和国」を設立する時がいまや必要だと思う。(「週刊医学界新聞」医学書院、12月8日号「GLOBE」12月7日号)