オリバー・ストーンら『よし、戦争について話をしよう。戦争の本質について話をしようじゃないか!』

オリバー・ストーンら『よし、戦争について話をしよう。戦争の本質について話をしようじゃないか!』

    ストーン監督の『プラートン』『7月4日に生まれて』をかってみて、米国のベトナム戦争の残酷さを思い知ったことがある。そのストーン監督が2012年テレビドキュメンタリー『語られない米国史』を制作し、書籍化し、広島、長崎の原爆投下の真実を描きだした。この本は、それにともなう2013年夏のストーン監督、ピーター・カズニック・アメリカン大教授。乗松聡子ピース・フィロソフィー・センター代表の広島、長崎、沖縄訪問記・講演録である。
    どこの国でも、自国中心主義の愛国歴史観から、戦争の暗部を隠したり、ウソで偽造したりする。米国でも、日本への原爆投下は暗部になっていて、直視していない。勝者も敗者も歴史でウソをつく。
    原爆投下は米国兵士の損失を無くし、太平洋戦争を終了させた正しい選択という「神話」を、ストーン監督はウソといい、ソ連参戦が、日本が降伏した要因であり、米国はソ連を牽制し、戦後冷戦に優位に立つ安全保障の抑止として、原爆を使用したと史実を明らかにした。
    こうした視点をもたらしたのは、ストーン監督のベトナム戦争従軍経験であり、カズニック教授のベトナム反戦運動への参加があるからだろう。
    さらに1994年の「エノラ・ゲイ展示論争」がある。広島に原爆投下したB29爆撃機展示を、国立スミソニアン航空宇宙博物館する際に、原爆の被害も展示しようとして退役軍人ら愛国グループの反対で、機体展示だけになった。原爆投下に触れないので、カズニック教授ら70人以上の学者が抗議した。
    この訪問記は、ストーン監督らが米国の中国封じ込めのアジア戦略への批判と、日米安保体制からの日本の「独立」とアジア友好を説く一方、「岡まさはる記念長崎平和資料館」を訪れ、日本の中国、韓国への「加害者性」も重視している点で重要である。
    さらに、広島、長崎と沖縄を繋がりの視点で語っていることも重要である。日本の原爆「被害者性」のみを重んじているのではない。米軍基地のある沖縄を訪ね、ストーン監督は沖縄戦と自ら体験したベトナム戦争二重写しにして見ている。
    稲嶺名護市長訪問記は、米軍基地が居座ることの愚かさを述べ、その後の辺野古基地建設の断念を求める海外識者声明にも名を連ねている。アメリカ軍事国家にも、まだリベラルな民主主義、人権派が根強く存在することに、日本人として心強く感じた。(㈱金曜日)