岡田尊司『愛着障害』

岡田尊司愛着障害

   
   岡田氏は、精神科医として長年パーソナリティ障害や発達障害の若者の治療に携わってきた。幼児期からの親や養育者への愛着が、その後の人格形成や対人関係の土台に成ると考え、この本で深く考察している。
   幼児期の父母や養父母などとの「愛着の絆」が、その後の人生に大きな影響を与える。岡田氏は精神科医だから、この本でも愛着の傷である愛着障害に力点が置かれているが、正常な安定型でも、対人関係の愛着の在り方を見直させてくれる。岡田氏は、有名な作家である川端康成夏目漱石太宰治ヘミングウェイ、政治家オバマクリントン米大統領スティーブ・ジョブズなどの具体例をあげて愛着障害を分析しているので、わかりやすい。
   いま愛着障害が増大しているという。愛着障害がうまれる要因と背景では、親の死別や離婚、親の不在、親の精神的不安定、親からの否定的評価、厄介者扱い、児童虐待、過度な甘やかしなどが挙げられている。
   愛着障害の特性と病理も綿密に説明されている。親と確執を持つと同時に、過度に従順という両価性、対人関係にほどよい距離がとれない、非機能的な怒りにとらわれやすい、他人への共感性の薄さ、全体より部分にとらわれる、道化に成りやすいなどを挙げている。
   愛着スタイルとして、①安定型愛着スタイル②回避型愛着スタイル③不安型愛着スタイル④恐れ・回避型スタイルなどに分類している。例えば不安型では、気ばかり遣い、拒絶や見捨てられることを恐れ、べったりした依存関係を好み、パートナーには厳しいという。
  最後に愛着障害の克服が述べられている。従来型のカウンセリングや認知療法の治療は効果がないと岡田氏はいい、「安全基地となる存在」や、愛着の傷を語り尽くし、表現していく、遊びと創造活動など「過去との和解」をする治療法を挙げている、(光文社新書