三上修『スズメ』

三上修『スズメ』

「われと来て遊べや親のない雀」(小林一茶
    三上氏の本を読んで驚いたのは、スズメはこの20年で半減したという記述である。ヒバリは都市化で激減し、メダカやゲンゴロウ絶滅危惧種であり、近年は蜜蜂が世界的に減少しているが、人間の傍で日常に生活しているスズメまでかとショックを受けた。
 三上氏は日本にスズメが何羽いるかという調査が困難なことを、秋田、埼玉、熊本の三県でスズメの巣探しにより、巣密度×面積で積算し、国土交通省の日本全土の環境面積で推計した結果、900万巣とし、一夫一婦で繁殖すると仮定して1800万羽としていた。だが2009年スズメの減少が言われたため、スズメの農業被害の変遷や、駆除・捕獲した数、環境省の鳥類繁殖分類調査、さらに山階鳥類研究所が全国各地で行っている鳥類標識調査のスズメの割合から、ここ20年で20−50%減少したと算定している。
 なぜ減少したのか。三上氏によると、スズメが巣を作る場所がないという。かっての木造住宅は、屋根、換気孔、軒下などがあったが、高気密の新住宅には巣を作る場所がない。庭木が少なくなり、空き地もなく子スズメの餌が取れなくなり、独り立ちしても春を迎える前に死んでしまう。水田の減少やコンバインの機械化、農薬なども原因として挙げられている。スズメは米などを食べるため害鳥されたが、同時に水田の雑草の種子や農業害虫を食べる益鳥っでもある。1950年代中国で害鳥として捕獲したが、いまは外したのは害虫が大量発生したからだという。
   三上氏の本が面白いのは、スズメが2000年間いつも人間の傍が好きで、人の有無を自分が繁殖する指標につかつているのは何故かとか、高密度での繁殖や最後に生む卵だけ色が違う「止め卵」の謎など、スズメの生態を詳しく研究して書いてあることだ。私は、これまで気に留めなかったわが小さな庭にチュンチュン鳴いて集まるスズメを、もっと観察しようと思った。(岩波書店