ブロッカー『気候変動はなぜ起こるのか』

ブロッカー『気候変動はなぜ起こるのか』

 ブロッカー氏は、コロンビア大学の地質学者で「グレート・オーシャン・コンベヤー」(海洋大循環と訳されている)の提唱者である。二酸化炭素の排出による地球温暖化が問題になるとともに、古気候の研究が、大気と海洋との相互作用の注目から盛んになってきている。この本も面白いが、専門的研究のデータがぎっしりと詰まっており、読むのに努力が必要だ。
 ブロッカー氏による「グレート・オーシャン・コンベヤー」の説はこうだ。グリーンランドの氷床に見られる突発的寒冷化を、海洋循環の要である大西洋子午線の乱れに関係していると考えた。大西洋にを北上する比較的温暖な上層水が最北端に達すると、寒冷な冬の風にさらされ、冷却され、上層水はその密度を増し、臨界に達すると深層にもぐり、南下し、寒冷化現象を起こすというのだ。コンベヤーの逆転現象が急激な気候変動をもたらす。この海洋循環の揺らぎは、太平洋から大西洋に相互関係をもたらす。海洋は、水温と塩分濃度で、1000年の順序で浮き沈みなどしながら地球規模で循環し、その乱れが急激な気候変動が起こるというのだ。
  問題は第10章「人類の時代」にある。ブロッカー氏によれば、大規模な温暖化が起こると、1世紀かかかってゆっくりと「海洋大循環」が停止する可能性があるというのだ。この結果、水循環の激変が地球規模で起こる。水供給量の変動は、各所に旱魃を引き起こすなど食糧生産に影響を及ぼす。なぜなら、降雨が熱帯地方に集中し激しくなり、熱帯以外では乾燥により、水が枯渇する。湖沼は激減する。  
    最後にブロッカー氏は「気候は怒れる獣である」と言っている。(講談社ブルーバックス、川幡穂高ほか訳)