ウォード『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』

ピーター・D・ウォード『恐竜はなぜ鳥に進化したのか』

 二酸化炭素の濃度の上昇による地球温暖化状態の到来という高温の夏を過しながら、ウォードの本を読むと、その壮大な進化の歴史が迫力をもって迫ってくる。ウォード氏の仮説は、進化も絶滅も、酸素濃度と二酸化炭素濃度が決めたというものだからである。地質学、地球化学、化石学、古生物学の学際的研究をもとに、地球のプレートの大陸移動や、大気の酸素濃度から生物の変化を読み取ろうとする。
6億年前からの地球の酸素濃度は、最高35%から最低12%の間で変動を繰り返してきた。変動は大陸移動や火山活動、太陽活動、小惑星の衝突もあるが、光合成の植物という生命活動に負うところも多い。
 ウォードは低酸素期には生物が異質性を持ち、新しいデザイン形態をつくり、高酸素期には多様性や巨大化を生むという。生命のカンブリア紀爆発は、グールドは偶然性を重視するが、ウォード氏は、低酸素時代に呼吸を適応させるための肺を隔室にする体節化であり、(節足動物環形動物)、殻を作り酸素を含む水をパイプで通し鰓呼吸する二枚貝アンモナイト、オウムガイを必然的に生みだしたという。
 恐竜は、低酸素で多くの生命が絶滅した後に低酸素状態に適応する呼吸効率のよい気嚢の肺(いまの鳥類が同じシステム)を作り、体温を一定にたもつ恒温動物化し、二足歩行で運動性を増し、卵胎生のシステムで栄えたという。隕石衝突で繁栄真っ盛りの恐竜絶滅の後、白亜紀以後の高酸素期にヒトの前身の哺乳類が、現在の酸素21%のシヅテムに適応う出来る体制を作り繁栄していったという。だから哺乳類は標高4200メートル以上の低酸素地帯では繁殖できない。低酸素時代の恐竜の子孫の鳥は大丈夫だが。
 「氷河期の子供」といわれた人類は、まだ数百万年は氷河期があるとおもっているが、驚くべき勢いで温室効果ガスを作り出しているから、もう氷河時代は終わったのかもしれない。ウォード氏は2億5000年の未来に、プレート移動などで、再び超大陸パンゲア)が現れ、酸素濃度の大暴落がうまれると予見している。だがそれまで人類は生き延びられるだろうか。急速な温暖化は100年後に、白亜紀以前の低酸素時代を呼び戻すかもしれない。(文春文庫、垂水雄二訳)