木村忠正『デジタルネイティブの時代』

木村忠正『デジタルネイティブの時代』


 この本の特徴は二つある。一つはデジタルネイティブを1982年生まれの第1世代から1991年生まれ以降の第4世代の4世代に分け、情報爆発を世代論で見ようとしている。二つはそれに木村氏が日本の情報文化風土として考えるコミュニケーション生態系の4点(空気を読む、テンション共有、繋がりや絡みによるコネクション重視、不確実性回避傾向)から分析しようとしている。
 たしかに1990年代から2010年にかけての情報爆発というコミュニケーションのソーシャルメヂア革命は急激である。それを世代論で見る視点は面白い。木村氏によれば、弟1世代(1982年生まれ)は、ポケベル、ピッチ世代でコンテンツは不十分で親指族といわれる絵文字や装飾が重んじられ、パソコンネットでは大学ネット化が始まったが、オンラインはオフラインに従属していた。弟2世代(1983−87年生まれ)高校時代バケット代を気にしながら携帯メールを使う。小学校の「総合的学習」でパソコンを使い出し、大学時代ミクシィを使う。弟3世代(1988−90年生まれ)は中高でパソコンの「情報」授業が必修化、高校でバケット定額制となり、携帯ブログ・リアルが流行し、動画サイトが普及する。ミクシィからツイッターへ。弟4世代(1991年生まれ)は小学校でパソコン授業、中学でバケット定額制になり、濃密な集団圧力で携帯利用、複数のソーシャルネットサービスを使い分け、オンラインとオフラインの区別もあいまいになる。世代論は面白いが、その負の状況としてのネットイジメや学校裏ネットなどもう少し追及して欲しかった。
 だが木村氏の本領は、日本の社会的コミュニケーション構造を文化人類学の手法で生態系として分析していることである。空気を読む圧力や、親密性とテンションの共有、サイバースペースへの強い不信感と安心志向のジレンマ、繋がりや絡みのコネ重視などから、日本のデジタルネイティブの特性が指摘されてくる。なぜ日本では自己開示しない匿名性が好まれるのかや、メールよりツイッターのつぶやきが重んじられるのか、さらに何故ウェブ日記が多いのか、何故ソサエエティ志向のフエイスブックよりツイッターが良いのかなど日本社会に強いインターネット不信感・不安感が外国諸国との比較で浮き彫りにされてくる。デジタルネイティブこそ、今の日本を映す鏡だと、とらえようとしている。(平凡社新書